第三章
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それでだ。こう言うのだった。
「死にたい、この苦しみには耐えられない」
「しかし僕達は」
「済まない、僕はもう」
死ぬとだ。また言うカストルだった。
「堪えられない。これ以上苦しむ位なら」
「馬鹿な、そんな・・・・・・」
ポルックスは絶望しようとしていた。もう一人の自分と言うべきカストルが死のうとしていることに。そして彼が死ぬのなら自分もだと決意した。その時にだ。
二人の前にある者が姿を現してきた。それは。
天空の神であるゼウスだった。彼は二人に対してこう言ってきたのだった。
「待て」
「待て?」
「待てといいますと」
「死ぬことはない」
二人両方に告げた言葉だった。
「決してだ」
「ですが私はもう」
カストルのその顔には死相が出ている。今にも死のうとしている。
「このまま」
「死ぬ。しかしだ」
「しかしといいますと」
「そなた達は離れることもないのだ」
その必要もないというのだ。
「絶対にな」
「ですが本当に」
「ポルックスよ」
ゼウスはここでポルックスに顔を向けてだ。彼に問うたのである。
「そなたはカストルと離れたくはないな」
「はい」
その通りだとだ。ポルックスは毅然とした顔でゼウスに答えた。
「私達は常に。何があろうとも」
「そなたの身体は傷つかない。だから死なぬが」
「カストルは」
「こうして死ぬ。ならばだ」
「ならばといいますと」
「そなたの不死の力は私が授けたものだった」
実はカストルは人の力だけでポルックスはそれに加えてゼウスからの祝福を受けていたのだ。それで彼は何をされても傷つかず当然毒にも冒されないのだ。
しかしその力をだ。今はだというのだ。
「ならばその半分をカストルに分けよう」
「それでカストルは助かるのですか」
「そうだ。だが」
「だが、といいますと」
「そなたは力の半分を失うのだ」
このことをだ。ゼウスは言うのだった。
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