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真田十勇士
巻ノ百六 秘奥義その十
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「二の丸、三の丸、西の丸、北の丸とありな」
「堀は広く深く壁も高く多く」
「堅固な城になりますな」
「ただ堅固なだけでなくじゃ」
 守りによいだけでなくというのだ。
「治にもよい」
「はい、人も多く集まり」
「その人で治めることも出来る」
「よき城になりますな」
「そうした意味でも」
「天下を治めるにはそれなりの大きな城が必要じゃ」
 よい場所にありそして多くの人が集まることがだ、大久保は自ら武辺と言うがこうしたこともわかっているのだ。
 だからだ、こう言ったのだった。
「江戸の城はこうした城になる」
「ですな、では」
「城はどんどん築いていき」
「天下の城にしていきますか」
「その様に」
「そして幕府の仕組みも出来てきておる」
 それもというのだ。
「よい仕組みがな」
「これまで幕府以上に」
「実によい仕組みになっておりまする」
「まさに天下を治める為の」
「それも出来てきておりますな」
「法までな、ここまで揃えばじゃ」
 大久保は確かな声で言い切った。
「天下は江戸から治まる」
「そうなっていきますな」
「そして江戸から幕府が天下を治め」
「長い泰平の世になる」
「そうした風にもなりますか」
「戦を怖れぬのは武士じゃ」
 卑怯未練を何よりも卑しむ、大久保の三河武士らしい一本気な気構えもその言葉に出ていた。
「しかしな」
「民は別ですな」
「やはり民は泰平が一番です」
「泰平に暮らすことこそが望み」
「そうなりますな」
「そうじゃ、民を幸せにするのが武士じゃ」
 武士の務めだというのだ。
「だからじゃ」
「それで、ですな」
「泰平は守るべきですな」
「その為に心を砕くべきであり」
「戦はなくすべきですな」
「江戸はそうした政をする場所になる」
 まだようやく城も町も出来たばかりであるがだ。
「これよりな、それを観るのは楽しみじゃ」 
「そのこと自体はですな」
「我等もですな」
「その泰平の世を守ること」
「そのことこそが」
「我等の願いとしようぞ、江戸は前の年より賑やかになった」
 そうなってきてもいるというのだ。
「最初見た時は何じゃと思ったであろう、お主達も」
「いや、全く」
「草しかない場所でした」
「城といっても崩れかけの城」
「一体何かとです」
「心から思いました」
 周りの者達もそれは言った。
「こんな場所がどうなるかとです」
「しかも大御所様は大抵大坂におられてです」
「何も出来ぬ始末」
「少しずつやっていきましたが」
「いや、あの時の江戸ときましては」
「全く以て酷い場所でした」
「そうじゃ、しかしじゃ」
 その江戸がというのだ。
「今ではじゃ」
「ですな、かなり変わりました」
「あの時と比べて」

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