アージェント 〜時の凍りし世界〜
第二章 《暁に凍る世界》
ドキドキ!?温泉パニック!!B
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ば消えてしまう事もある。一晩ならまず確実だろう。その上現在時刻は午後11時手前。そんな時間に雪山に出ている物好きがいると、一体だれが思うだろう。
しかし、そこまでなら適当にごまかせると暁人は判断する。
『まあ…な、趣味みたいなものだ。ガキの頃からやってるから、それなりだとは思うけどな。』
「へぇ……あの、後でお時間があったらお話できませんか?」
『………悪いな。つーか、年頃の娘がこんな時間に男を誘うもんじゃないぜ?』
「へっ?」
『……あのなぁ、それじゃあ襲ってくれって言ってるようなもんだぞ。』
「…………………あ。」
瞬間、落ち着きかけてたなのはの顔色が、ボシュッとでも音が出そうな勢いで再び朱に染まる。自分がどれだけ大胆な事をいったのかようやく理解したのだろう。
「す、すみません!全然そんなつもりは!!」
『分かってるよ。……こんなのに一々対策立ててるのか、俺は。』
「……あの、最後に何て?」
『いや、男を誘うにしては色気が無かったなって……』
「い、色気……わ、私だってその気になれば……」
何やらおかしな事を呟き出したなのはに、誤魔化し切れたと判断した暁人は再び立ち上がり、脱衣所へと向かう。その背中に向けて、なのはは顔は向けずにこう言った。
「その、また会えたら嬉しいです。……できれば昼に。」
その台詞に、暁人は苦笑を隠せなかった。
『……なに、そう遠くない内に会えるさ。必ず、な。』
何せ、目的の為には、必ず倒さねばならないのだから。
心の中でその一文を付け加えると、暁人は今度こそ浴場から出て行くのであった。
「………はぁ。」
一人残されたなのははほっとため息をつく。思い出せば未だ顔が熱くなるが、ひとまずこれでよかったのだろう。そう思い、先ほどまで暁人がいた辺りに向かう。するとーーー
「………えっ、ぬるい?」
その辺り一帯の湯が、僅かばかりぬるい事に気付く。本当に僅か、気のせいと言われればそうか、と思えてしまう程だが、確かに温度が低い。
「……偶然かな?」
そう結論を出したなのはの視界の隅で、氷の欠片が、誰に知られる事もなく融けていった。
休息は終わり、新たな戦いが幕を開ける。
それぞれの思いもそれぞれの道も、白き旭は等しく、そして冷たく照らし出す。
ーーーー凍り付いた運命が、再び動き出す。
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