一話
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目の前に広がる青々とした海に白い軌跡を描く一隻の船があった。
そんな船上では潮風を一身に受ける一人の青年がいる。
長いであろう黒髪を後ろで纏め、いかにも侍というべき装束をしている。
その顔は精強さと爽やかさが混じる好青年というべきもの。
青年の名は徳田新之助。本名を徳川吉宗という。
奇しくも江戸幕府8代将軍と同じ名である。
そんな彼は親の都合から目的地である大江戸学園に転入することになったのだ。
大江戸学園、トウキョウ沖に浮かぶ学園都市である。十万人という生徒を抱える面積の広さとニホン中枢へと優秀な人材を送り込んでいるその実績は計り知れない。
「ここが大江戸学園……」
船着き場に到着し学園都市の大地を踏んだ。
「あそこの大きい建物で手続きをお願いします」
「わかった」
船員が指差す先には大江戸中央ぽうととでかでかと書かれた看板があった。
一昔の城門屋根のような白と黒を基調をした大きな建物だ。
中に入りこの学園の制服に着替えた。
和洋折衷がイメージされており、やはりというべきか江戸時代の着物と瓜二つであった。
ぽうとと呼ばれた場所を潜り抜けた先に広がっていたのは歴史の教科書でよく見る江戸の城下町だった。
「凄いな……ホントに江戸に来たみたいだ……」
思わずその光景に感嘆の声が出る。
真っ直ぐと延びる道の両脇には様々な店が軒並み連ねて出ていた。
時には客入れのための威勢のよい呼び声が聞こえる。
だが文明の機器である路線電車や街灯も見受けられた。
さらに目を凝らせば看板などが液晶スクリーンであることも確認できる。時間と共に変化し、時には団子、時にはまんじゅうなどのCMが写し出されるのだ。
そうしてしばらく町並みというか人並みを観察しながら学園都市の中心部である江戸城………のすぐ隣にある生活科を目指した。
「こちらが鍵になります。くれぐれも無くさぬように」
「わかった。すまんな」
生活科から借家の鍵を受け取り、指定された住所に行くとなにやら人だかりが出来ている。
茶店らしき場所に店主であろう男に黄銅色を基調とした和服の少女がいた。その肩には紫色のベストのようなものを着ている。
加えて店の前には薄い緑色の髪をしている少女が男子生徒に囲まれていたのだ。
「ご、ごめんなさい〜」
薄い緑の髪をした少女が男子生徒もといチンピラ生徒に謝罪した。
どうやら彼女の不注意により彼らと問題を起こしたようだった。
「痛ってぇな。嬢ちゃん」
「ぎゃはは。あばらの二、三本はいってんじゃねぇか」
「どうしてくれんだぁ?嬢ちゃん。‥‥‥もしかしてそこの店の客か?
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