暁 〜小説投稿サイト〜
至誠一貫
第二部
第三章 〜群雄割拠〜
百十一 〜義将と覇王〜
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ならこれが私の裁きよ。異議は認めない」
「…………」

 やはり妙だ。
 いくら冷静さを失っているとは申せ、華琳ともあろう者が献言を即座に一蹴するとは。

「いいわ。秋蘭がやれないのなら、春蘭が代わりなさい」
「え? し、しかし……」
「あら、貴女まで私に歯向かおうと言うの?」
「い、いいえ! 決してそのようなつもりは」
「じゃあやりなさい。この男、もはやこれ以上生かしておく価値すらないわ」

 冷たく言い放つ華琳。
 が、夏侯惇は呆然とするばかり。
 ……と。
 不意に、辺りが閃光に包まれた。

「な、何事だ!」
「クソッ、何も見えん!」

 兵らが右往左往する中、私の目の前に人影が現れた。

「鈴々か」
「そうなのだ。お兄ちゃん、すぐに逃げるのだ!」

 そう言うと、鈴々は私を立たせて素早く縄を切った。

「これは?」
「説明は後なのだ!」
「……そのようだな」

 そのまま走り出そうとした私達の行く手を、何者かが遮った。

「……ごめんよ、兄ちゃん」
「兄様、ここは通せません」
「季衣に流琉か。……二人共、本意ではあるまい?」
「…………」

 答えず、獲物を手にする二人。

「そこをどくのだ、春巻き!」
「どけないんだよチビっ子!」

 鈴々と季衣、一騎打ちならばいい勝負になる二人であろう。
 だが、今は時が惜しい。
 ……どうすれば良い。
 そんな事を考え始めたが、それも一瞬のうちに終わる事になった。
 ドン、と大きな音と共に背後の壁が吹き飛んだ。

「歳っち!」
「……兄ぃ。大丈夫?」

 霞と恋だった。
 雛里が、霞の背にしっかりとしがみついているのが見えた。

「邪魔するな!」
「行かせません!」
「……無駄。お前達、恋の相手にはならない」

 その言葉通り、飛びかかってきた季衣と流琉があっさりと吹き飛ばされた。

「歳っち、鈴々とこれに乗りや!」
「応!」

 霞が手綱を引いた馬に、私は跨った。
 鈴々が後に続いたのを確かめる。

「皆、済まぬ。参るぞ!」

 馬に鞭を入れ、私達はその場から駆け出した。
 ……ともあれ、まずは皆と合流せねばな。
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