第二部
第三章 〜群雄割拠〜
百十一 〜義将と覇王〜
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その点、楽進は好ましき存在なのであろう。
「では、戻るか。あまり遅くなれば警備の者が怪しむかも知れぬ」
「あ……あの。土方様」
「む?」
「差し支えなければ、少しお話を伺えないでしょうか?」
「話? 私のか?」
「はい。予てから、一度お目にかかりたいと思っていたところでして。土方様の噂はいろいろと耳にしていますので」
噂、か。
今更世間の評価を都度気にする事もないが、巷ではいろいろと言われているらしい。
褒める者は手放しで、手厳しい批判をする者は容赦がないという。
生き様を改めるつもりもなく、相容れない者らと分かり合える事も恐らくなかろう。
さて、楽進はどちらの立場であろうか。
「……良かろう。だが、楽進も変わった奴のようだな」
「私が、ですか?」
「ああ。私は鬼と呼ばれる事もある男だ、それに女子に見境がないとも言われている。傍から見れば救いようのない厄介者だぞ?」
「……そうでしょうか? いえ、仮にその通りだとしてもそれは土方様の一面に過ぎないのではないかと思います」
「ほう、わかったような口を聞くではないか」
「も、申し訳ありません。私はただ、思うところを……」
慌てて頭を下げようとする楽進を、私は手で制した。
「構わぬ。取り繕って腹の底が読めぬ輩より、お前のように率直に述べる方がよほど好感が持てる」
「よ、宜しいのですか?」
「真面目だな。いいから続けよ」
「は、はい。土方様は比類なき武勲を挙げておられます、私のような者でもそれを耳にする程に。そして、数多くの武将を従えています。どの方も、優秀だと聞き及びます」
その通りだな。
武勲は兎も角、私についてきている者は歴史でも名の知れた人物ばかり。
本多忠勝は、神君家康公に過ぎたるものと評されたが今の私はその比ではない。
蜀の五虎将軍が四人に伏龍鳳雛、飛将軍だけでも過分と言えようがその他にも将星が綺羅星の如く集っている。
行く末はわからぬが、このまま歴史書に書かれる身となった時に果たしてどう評されるのであろうか……考えても詮無き事か。
「華琳様も、土方様の事は常日頃から高く評価しておいでです。どのような事をしてでも、いつか跪かせて見せると」
「うむ、それは面と向かって宣言された。我が軍丸ごと、自分のものとするとな」
「……そのような御方ですから怖さなどありません。それに、私は世の噂などに惑わされずに自分の目で確かめるのが一番だと考えていますから」
「そうか。それで、実物を目の前にしてどう思った?」
「はい。ご自身に寸分の隙もなく、強者だとの噂は本当だと実感しています。それから……心根の優しい御方だと」
その言葉に、私は思わず苦笑する。
「優しいだと? 私がか?」
「は
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