第二部
第三章 〜群雄割拠〜
百十一 〜義将と覇王〜
[1/5]
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
「くかー」
「すうすう……」
宴も終わり、私は充てがわれた部屋へ。
兵らにも食事のみならず、酒まで供されたとの事。
抜かりのない華琳らしい手配りだ、兵らも驚いたであろうな。
鈴々と雛里の部屋はまた別に用意するとも言われたが、二人の性格から否であろうと私の方から断った。
「あら、あの二人にも手を出したのかしら? 流石、英雄色を好むを地で行く歳三ね」
……華琳はそう言って厭らしい笑みを浮かべていたが。
事実ではないのだが、浮名が些か立ち過ぎたやも知れぬ。
自業自得でもある以上、今更ではあるのだがな。
相変わらず寝相の悪い鈴々は、褥からずり落ちそうになっている。
起こさぬようそっと直してから、起き上がった。
あまり酒は過ごしたつもりもないのだが、喉の渇きを覚えたからだ。
水瓶を探したが、この部屋には置かれておらぬようだ。
戸を開け、廊下に出た。
「如何なされました?」
不寝番らしき兵に誰何された。
見張りの意味もあろうが、警護につけられた者と見た方がよかろう。
「喉が渇いてな。水を所望したいのだが。ああ、ついでだから厠も借りたい」
「厠?」
ふむ、通じぬか。
ならば雪隠は……尚更の気がする。
「小用を足したいのだが、どうすれば良い?」
「それでしたら、今しばらくお待ちを。交代の時間になりましたら、その際に」
「どのぐらい待てば良い?」
「あと……」
と、兵が答えようとした時。
「どうかしたか?」
薄暗い廊下の向こうから、声がした。
「はっ。実は」
「よい、私から申す。井戸と、ついでに小用を足したいと思ってな」
「……では、私が案内します。お前は引き続きこの場を頼むぞ?」
「はい!」
「良いのか? 仮にも一手の将にこのような事をさせても」
「構いません、鍛錬に向かう途中でしたから。どうぞこちらへ」
初対面の時、真面目な印象は受けたがどうやらそのままの人物らしい。
私に背を向け歩き出した楽進を見て、そう思った。
用を済ませ、井戸を借りて水を飲む。
うむ、甘露かな。
「人心地つけた。忝ない」
「いえ、お気になさらず」
「それにしても、このような刻限から鍛錬とは。日課にしておるのか?」
「あ、はい。私はまだまだ未熟者ですから」
身に纏う闘気はただならぬものがあり、身体の傷は歴戦の証と見た。
同じく華琳麾下、夏侯姉妹のような人外とも言える猛者には及ばぬのかも知れぬが……。
最も、己の研鑽に邁進するという姿勢は好ましくもある。
華琳は才がある者を欲し愛でるが、才に溺れ思い上がる者は近づけぬ。
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ