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TOHO FANTASY T
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の皆さんは離れて下さい!」

霊夢に気を使わせ、野次馬たちを退散させた女性は着替え中の霊夢を守っていた。霊夢も早めに着替えを終わらせ、出てきた時には完全な奴隷となっていた。彼女は逃亡犯から最底辺にまで堕ちたのだ。しかし彼女は絶望を大地とし、希望を友として見据えていた。最早、彼女の敵は何者でもない『真理』であったのである。

「これで完璧ですね!…では早速、私が研究者の家までお送りします!途中で電車を使うんですけど…あ、この町の事はまだ説明していませんか?」

「町の事は聞いてないわね」

「じゃあ説明します!この町はA、B、C、D、Eと区画が分けられていて、5つの区がドーナツ状に存在しているんです!それで、その中心に聳え立つのが「PYT研究所」の建物という訳です!…あの建物ですよ!」

女性は遠くに建っている、1番大きなビルを指さす。一面硝子張りで、天さえ届きそうな高層ビルだ。あそこから見た世界の広さには、どんな感嘆を覚えるだろうか──と霊夢に思わせるほど高く聳えていた。スラムから見たそれは、蟻から見た象のようなものであったのだ。

「で、今から私たちは電車に乗ってその研究者の家へ行くんです。ここはC区に位置しているスラム街なので、1番近い「C区駅」から1駅跨った先の「E区駅」に行きます。…環状線なので、何かしらに乗れば絶対着くので安心してください」

「でも電車はお金を取るものじゃないのかしら?…私、持ってないわよ」

「お金の心配はありません。私が負担します。…ですが」

「ですが?」

相手は言葉を立ち止まらせて、少しの間を恐怖に満たさせた。如何ばかりにして、この現実を乗り越えるべきかを考えていたのである。その省察たるや並大抵とは思えぬ明晰性で、希望を背負ってもらう霊夢をどのように導くか、その預言者的な存在性を空間に呼応させていた。存在論的な論証を悉く廃絶させた実存項が、彼女を照らす。今やその明晰は理解の大地を鳴動させ、揺れ動かすのだ。測定即ち或る確定された単位が直観の全体に部分として幾何含まれているかを計算する一つの作用は、こうした実存項の広がりを形式的、方法論的に示すのだ。正しく『叡知は徳である。それは最高の善である』(sapientia virtus est, id summum bonum est)という言葉の中の、叡智の諸規定の中絶が徳を、並びに最高善を与えるのだ。実存項は、ここに存在していた。

「…きっと駅や電車内では指名手配されているに違いありません。──奴隷が電車に乗ることは別におかしく無いのですが、指名手配されると情報網が…」

女性は霊夢が捕まることを恐れた。それは希望の喪失、何よりも避けたい事実である。降って沸いた英雄を易々と手放す愚を犯すことは、どうしても躱したいものであったのだ
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