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TOHO FANTASY T
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ら、とにかく前へと進んでいた。巒?のように連なるビル群を視界の端で通り過ぎていく。
そんな騒動を多くの人がビル内や道の脇、対向車の運転手などが見ており、治安を司る警察への通報が絶えなかった。
霊夢は怖かった。これから自分の身に何が起きるのか、全く分からなかった。だからスピードを出していたのだ。寧ろスピードと言う概念さえあやふやな彼女にとって、それは宇宙的な数値であった。バイクのメーターに橙色の丸いランプが点灯しても、彼女は把握出来ない。

「…何よ、このランプ」

特に気に止めもしなかった彼女はビル群から離れ、郊外のスラム街へと入っていく。
無造作にかけられた洗濯物が走行する彼女の視界を遮り、最終的にはスラム街の真ん中でガソリン切れになり、バイクは止まってしまった。

「何よ!止まったじゃない!」

霊夢は仕方なく降り、周りを見渡した。全員、貧相な服を着ていた。が、全員は事態を察知したのか慌てだし、その中の1人の女性が巫女に話しかける。

「今はここに隠れてください!」

二十歳前後と思われる女性は霊夢に棚の中を勧めると、霊夢は疑い無しに「助かるわ」と言って棚の中に隠れる。そして女性はすぐに棚の扉を閉めた。棚の中は魚が燻ったような匂いが充満しており、とても居やすい場所ではない。しかし彼女は我慢した。その真っ暗な中、彼女は扉越しに耳をあてて外の様子を確認することに精神を研ぎ澄ませたのである。
外では誰かがやってきては執拗に聞きまわっていた。男の力強い声が、辺りに響き渡る。

「ここらへんで紅白の服を身に付けた脱走奴隷を見なかったか?」

「み、見てません…」

自信なさそうに知らないふりを貫き通した周りの人たち。霊夢は自分を匿ってくれた人たちに心から感謝した。

「本当に見ていないんだな?」

「はい、見ていません」

「…そうか。もし見たのならば、仕えている主人たちに連絡するように」

その「誰か」はそのまま去っていった。それを足音で把握した。そして真っ暗な世界にいた霊夢の眼に突如、光が映し出され自身に手が差し伸べられていた。彼女にとって、それは救済を司る天使のように見えた。これが恩寵であったのか、と。

「これでもう大丈夫ですよ」

「助かるわ。…しかし、どうしてあなたたちはこんな見ず知らずの私を匿ってくれるのかしら?」

「…それは、あなたがかつての私たちだからです」

◆◆◆

「かつての私たち?」

霊夢は疑問を呈した。相手が言い放つ、意味深な表現に突っかからずにはいられない性分であったのである。
これとて彼女は心底で考えてみた。その内省において彼女自信が測るところの正義に於いて、錯綜する真相を放っておけないと言う世話焼きな性格も人格として対岸に体現されていたのだ。
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