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適える初恋
第一章
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          適える初恋
 七歳にしてだ、フェリペ=オルドランドはこんなことを言った。
「好きな人が出来たんだ、僕ね」
「えっ!?」
 息子の告白を聞いた両親は食事の場で思わず声をあげた。
 そしてパンやアヒージョを食べる手を止めてだ、息子に問い返した。
「それは誰だい?」
「一体誰なの?」
「近所のテレサちゃんか?」
「それともカテリーナちゃんなの?」
「先生なんだ」
 顔を真っ赤にさせてだ、フェリペは幼いながらも整った顔で言った。茶色の髪はポルトガル人にしては珍しく直毛の銀髪だ。目と肌の色は黒いがこの髪の毛はイギリス人の祖母のものだ。
「担任のね」
「担任の?」
「っていうと」
「うん、ニキータ先生だよ」
 ニキータ=サルコジという、フェリペの担任の先生だ。
「あの先生が好きなんだ」
「おい、それはな」
「ちょっとね」
 両親はフェリペの言葉に戸惑いつつ返した。
「あの先生は二十七歳だろ」
「あんたまだ七歳よ」
「二十歳も年上だぞ」
「ちょっとね」
「駄目なの?」
 フェリペは目を瞬かせて戸惑う両親に問い返した。
「先生を好きになって」
「七歳自体が早過ぎるしな」
「まだね」
「しかも相手は担任の先生か」
「それも二十歳も年上の」
「だって先生彼氏いないっていうし」
 これはニキータが笑って担任になった時に最初に言ったことだ。
「独身だっていうし」
「いや、それはいいけれどな」
「彼氏はご主人がいないなら」
「流石に相手がいる人はまずい」
「それがわかってるならいいけれどな」 
 このことはいいとした。
 しかしだ、息子にこうも言った。
「けれどね」
「まだ七歳でしかも二十歳も年上だぞ」
「それで好きな人とか」
「どうなんだ」
「僕本気だよ」
 フェリパは実際に嘘を言うことはなかった、完全に本気だった。
「大人になったら先生と結婚するんだ」
「二十歳も年上の人とか」
「結婚するの」
「そうするよ」
 絶対にというのだ。
「決めたから」
「そう言うのか」
「本当に」
「そうだよ、絶対にね」
 こう言うのだった、あくまで。
 そしてこの夕食の後でだ、両親はフェリペが寝てからだった。二人でリビングで真剣な顔を見合わせて話をした。
 まずは父のロベルトが言った、顔は息子によく似ている。
「まさかな」
「そうよね」
 妻のオパラも応える、色黒で面長の彫の深い整った顔で銀髪は長い。
「七歳でね」
「しかも学校の先生を好きになったか」
「早過ぎるし」
 それにだった。
「二十歳も年上の人なんて」
「想像していなかったな」
「全くよ。ただね」
「ただ?」
「いえ、今何か落ち着いてきて思ったけれど」
 オパラはこう夫に言った。
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