第二章
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「それもな。けれどな」
「けれどそれでもか」
「御前はあえて買ってか」
「贈るんだな」
「ああ、頭ではわかっていてもな」
本当にそれでもだった。本当にだ。
「心は違うんだよ、今は」
「それで毎日通いつめてか」
「贈りものもして」
「そうするんだな」
「ああ、そうするさ」
俺は達観していた。ある意味において。
そしてその中で。俺は同僚達に話した。
「絶対にな」
「そうか。それじゃあな」
「わかっててやってるのならな」
「仕方ないな」
「それならな」
こう話してだった。そうしてだった。
俺はそのコートを持ってだ。そしてだった。
俺は店に来た、そしてその人にそれを手渡した。
俺からコートを貰ったその人は。妖艶な笑顔でだ。
そのうえでだ。俺に言ってきた。
「有り難う」
「これが欲しかったんですよね」
「とてもね。それならね」
受け取ってくれたうえで。この人が言ってくれたことは。
「今日はサービスするわ」
その日の飲み代、そしてだ。
夜も一緒にいてくれた。この日がはじめてだった。
それから度々俺にねだってきた。ただ俺の財布の具合を知っているかの様に。
俺もそれに応え続けた。それで貯金はいつもなかった。
けれどそれでも俺は満足していた。ただひたすらあの人の為に使った。
そんな俺にだ。仲間達はまた言ってきた。
「本当にのめり込んでるな」
「時々あれだろ?相手もしてくれるって?」
「完全に篭絡されてるな」
「洒落になってないだろ」
「けれどそれでもなんだよ」
本当にわかっていた。頭では。
だがそれでもだった。やっぱり心は違っていて。
あの人のバーに通いつめて飲んで贈りものを捧げていった。そうしたことが暫く続いた。
しかしこうしたことは続かない。全ては突然に終わる。
それはこのことも同じだった。俺がある日店に行くと。
あの人じゃなくて若い兄ちゃんがいた。兄ちゃんは洒落たバーテンの格好をしてカクテルを作っていた。その兄ちゃんを見て俺は目が点になった。
それでだ。兄ちゃんにあの人のことを聞いた。
「ああ、あの人ですね」
「この店のマスターだったんじゃないんですか?」
「昨日まではそうでした」
「昨日までは?」
「はい、昨日付けで店を今のマスターに売りまして」
店を売った、そうしたというのだ。
「それで故郷に帰りましたよ」
「故郷って」
「あの人実は九州生まれで。博多で」
「じゃあそこに帰ったんですか」
「はい。それでもうこの街にはいないです」
このことは確かだというのだ。
「もう帰りましたよ」
「そ
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