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増えてもいい
第六章
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 そしてだ、正樹が翌日会社から時間を見付けて自分の携帯電話を使って市役所に連絡するとだ。
 その連絡を受けてだ、電話の向こうの市役所の人は仰天した声になってそのうえで彼に聞き返してきた。
「あの、本当ですか!?」
「嘘かどうかは家に来られればわかります」
「トキが、ですか」
「はい、家の玄関の前にいて」
「保護したんですね」
「そうです」
 市役所の人にも冷静だった。
「昨日」
「わかりました、では」
「はい、自宅には母がいますので」
「では今から自宅に向かいます」
「お願いします、それでトキは」
「すぐにこちらで保護をして国で、です」
 何しろ天然記念物だからだ。対応も国家単位だった。
「特別に保護しますので」
「そうなりますか」
「後はお任せ下さい」
「宜しくお願いします」
 こうしてだった、市役所の人がトキを保護した。しかしこのことは当然ニュースになり世を騒がした。まさかトキが普通に家の玄関の前に来て保護される様な事態が起こるとは誰も想像もしていなかったからだ。
 だがそのニュースもすぐに他のニュースに流れてだった。
 世間の話題に上がらなくなった、正樹はそうなってから夕食の時に両親にこんなことを言った。
「トキが無事に保護されてよかったね」
「ああ、政府が特別に保護してな」
「飼育しているらしいわね」
 両親はコロッケを食べつつ正樹に応えた。
「何よりだったわ」
「無事に収まってな」
「そうだね、トキも助かったしね」
 それでというのだった、正樹も。
「よかったよ」
「そうだな、それでだが」
 父はコロッケをおかずにして御飯を食べながら我が子に問うた。
「若しトキが天然記念物じゃなかったらどうしていたんだ?」
「ああ、その時はだね」
「一体どうしていたんだ?」
「まあね」 
 やはり素気なく返す正樹だった。
「飼っていたかな」
「そうしていたか」
「普通にね」
「そうしていたんだな」
「だって鳥だから」
 トキもまたそれだからだというのだ。
「来る者は拒まずでね」
「飼っていたか」
「そうしていたよ」
「鳥は増えていいんだな」
「飼える状況だからね」
「飼えるだけか」
「うん、飼うよ」
 そうするとだ、やはり正樹は冷静に答えた。
「どんな鳥でもね」
「そうか、わかった」
「トキは大きいけれど」
「鳥は鳥だよ」
 正樹は母にも答えた。
「だからね」
「家に来たら」
「飼うよ、それだけだよ」
「そうなのね、あんたは本当に鳥が好きね」
「子供の時に雀を見てからね」
 彼がまだ幼い時にだ、電線の上に連なってチュンチュンと鳴いている雀達を見て妙な可愛さを感じてからだ。
「それからね」
「好きになって」
「沢山飼ってるんだ」
「じ
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