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増えてもいい
第五章

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「それ位は普通だよ」
「普通だっていうけれど」
「大変だったんだ」
「そうだよ、それとね」
「それと?」
「おしっこもしたよね」
「そっちもお掃除したわ」
 当然だとだ、母は正樹に答えた。
「大変だったわ」
「大変でも何でもないよ」
 正樹は自分の主観から答えた。
「それは」
「そうなの、あんたの鳥への愛情は相変わらずね」
「そうかな」
「そうよ、まあとにかく流石にトキはね」
「うちでは飼えないね」
「どうしてもね」
「天然記念物だから」
 これが理由だからであるのは間違いない、そもそもここでトキが何故家に来たのかも謎である。
「無理よ」
「僕もそう思ってるよ」
「じゃあ保健所か市役所に連絡をして」
「そう、お話をしてね」
 そしてというのだ。
「引き取ってもらおう」
「そうね、ただね」
「ただ?」
「どうしてうちに来たのか」
 首を傾げさせてだ、母はまたそのことを話した。
「それが謎だけれど」
「そのことだね」
「絶滅寸前というかね」
「中国から輸入して孵化させてね」
「必死に増やしている鳥が」
 そこまでしている鳥がというのだ。
「うちに来たのか」
「謎だよ」
「全く以て、けれど」
「けれど?」
「来たからにはね」
 それならというのだ。
「何とかしないとね」
「飼えないにしても」
「保護はしてね」
 それからというのだ。
「連絡しようね」
「それじゃあ」
「お父さんにも話そうか」
「帰ってきたらね」
「そうしたら」
 二人で話してだ、そして朝のことから既に知っていた父もそれを聞いて納得したのだがそれでもだった。
 難しい顔で帰ってきてだ、こう言った。
「信じられないんだがな、今も」
「いやいや、可能性はゼロじゃないから」
「今も冷静だな」
「焦って何かなる?」
 正樹は父にもこうした調子だった。
「それで」
「それはそうだけれどな」
「だったらね」
「焦らず落ち着いてか」
「考えてね」
 そうしてというのだ。
「市役所にでも連絡して」
「終わりか」
「うん、まあトキが保護出来てよかったよ」
 やはり冷静に言うのだった。
「無事にね」
「じゃあ市役所に連絡するか」
「保健所よりもそちらがいいかも」
 保健所が薬殺処分をするので何となくイメージ的に市役所に連絡した方がいいとだ、両親は考えた。
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