第三章
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「日本にいたら」
「それはね」
今度は母が応えた。
「何処でも起こる可能性があるから」
「そう、だからね」
それでというのだ。
「いざという時は」
「大きな地震が起こった時は」
「皆を助けないとね」
見捨ててはいけないというのだ。
「絶対に」
「二百羽いるけれど」
「皆をだよ」
正樹は強い声で言った。
「助けてね」
「そうしてなのね」
「僕達も逃げないとね」
「それならな」
ここで父が出したアイディアはというと。
「父さんが丁度キャンピングカーを買おうと思っていたからな」
「ああ、お父さんアウトドア派だからね」
「キャンプに使うからな」
このこともあってというのだ。
「今度買うつもりだからな」
「それでだね」
「いざという時はな」
「皆をキャンピングカーに乗せて」
「すぐにな」
「そうして逃げればいいんだね」
「逃げられる状況ならだがな」
条件は限られているがというのだ。
「そうしたらいい」
「それじゃあ」
「ああ、いざという時うはな」
「キャンピングカーで」
「皆を連れて行けばいい」
「それじゃあね」
正樹は父の言葉に頷いた、そして実際にだった。
キャンピングカーが購入された、しかし幸いにして正樹が心配していた災害は起こらなかったが。
ある日の朝だ、何とだった。
母が朝起きると家の玄関に見慣れぬ鳥がいた、その白く細い目の周りが赤く嘴が黒い頭の形がオールバックに似ている鳥を見て母はまさかと思ってだ、まだ寝ている正樹を起こして玄関の方に連れて行きその鳥を見せてそのうえで彼に尋ねた。
「あの、この鳥って」
「トキだね」
「トキって」
「いや、まさかね」
まだ寝惚けた顔で言う正樹だった。
「うちにまで来るなんて」
「いや、そうした問題?」
母は眉を顰めさせて我が子に返した。
「トキっていったら」
「絶滅寸前でね」
「人工飼育とか何とかで、でしょ」
「うん、数を増やそうとしているよ」
日本ではそうなっている。
「実際にね」
「そんな鳥がどうしてここに」
「たまたま来たんじゃないかな」
これが正樹の見立てだった、見ればトキは家の玄関のところに立っていて実にくつろいだ感じである。
「ここまでね」
「たまたまって」
「だって鳥だから」
「飛んで来るっていうのね」
「トキはそうした鳥だから」
それでというのだ。
「そうしたこともあるよ」
「天然記念物なのに」
「天然記念物でも鳥だから、まあとにかくね」
「会社行くの?」
「仕事はちゃんとしないと」
何時如何なる時でもというのだ。
「やっぱりね」
「お金が手に入らないから」
「うん、だからね」
それでというのだ。
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