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或る皇国将校の回想録
第四部五将家の戦争
幕間三 伯爵家の政界談義
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焼いたのも〈皇国〉軍だったわけだが

「そうだな、だが逆に言えばそれだけだ」
「近衛衆兵隊がそもそも弱兵の集まりであることや皇家が力を持つことをだれも望んでいないため実仁殿下の人気と才覚に依存した小派閥だ。新城殿を幕下に組み込んだことで駒城派と関係を深めているが傘下というわけではない。近衛衆兵隊の将校の中でも、衆民将校の一部や叛徒上りの主流から外された弱小将家将校の中には五将家に反発する連中も多い」

「ううむ」
 衆民人気と親王の権威で成り立つ派閥――誰からも敬われているが実権を与えたくはない、面倒な存在だ。

「さて。いわゆる五将家に連なる大手勢力はこのようなところだな。次は中堅派閥だ大派閥に従属する派閥内派閥だが独自性を持っている」

「はい」

「まずは舞潟派だな。執政代兼衆民院与党 皇民本党総裁の舞潟章一郎を主軸とした執政派閥内の派閥だ。
過度の機会主義的な行動の為、利賀を支持する与党内他派閥、野党からは距離を置かれているが、顔の広さと舞潟が作り上げた天領での地盤は無視できるものではないな」


「そして最後が馬堂=弓月派、つまり我々だ。元々、駒城派の重鎮であった馬堂家が政治的危機によって独自性を持ち出した結果として生まれた派閥というべきだろう」

「守原の面子を結果的に丸潰れにした上に御育預殿が皇主陛下に奏上。重臣団、特に駒城の中枢から離れた者であればあるほど焦っていると義兄上もいってましたね」

「その神輿にされているのが馬堂だ。考えてみろ、豊守殿が昇任したてでなぜ官房理事官などと准将が割り振られる中では最重職に抜擢されたと思う」

「不満の緩和ということですか、あぁそもそも義兄上が死んだものとされていた以上は」

「偶然の産物だな。とはいえ降ろしてしまうわけにもいかん。こうして独自に動けるだけの立場ができたわけだ」

「これだけなら良くある派閥内派閥で済むのだが話をややこしくする人間がいてな」

「父上」「ハッハッハ」
 ハッハッハじゃないが
「まぁそういう事だな。内務省高官の弓月家と婚約関係にあることで独自性が高まっている」
「えぇと、そもそもどうしてウチと馬堂家の間に縁談ができたのでしたっけ」
「そもそもだ、今は内務省を頂点とした警察組織などと言っているが元は何かわかるか?」

「将家の軍ですよね。基本的には土着の領主が責任を負っていたわけですから」

「正解だ、つまりは今の〈皇国〉軍と元は同じで五将家によるところが大きい。私はその中立的な立場だったこともあって国家組織としての内務省中枢と天領地域行政に携わっていた。現当主で豊久の祖父である豊長殿は騎兵将校から転科し、憲兵の中央集権化に携わっていた。
そこでまぁ再就職のあれこれもあって知らぬ仲ではなかったのだよ。堂賀
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