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或る皇国将校の回想録
第四部五将家の戦争
幕間三 伯爵家の政界談義
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で見知っている人間の考え方だ。という事は――
「こちらは東州軍に勤務する将校や家領の経営に従事している将家に多い。むろんそうした単純な括りはできないがね、海良末美を中心として執政府内で動いている者も多い、逆に中央派のやり方に賛同するものが東州にもいる、あくまでどちらが主導しているかという違いだ」

 父の答えに葵は満足そうにうなずいた。自分の考えもそう悪くはないと自信がわいてきた。

「さて最後は――うむ、これは何とも言い難いが一応あげておくか。利賀執政閣下の派閥だ。とはいえ寄り合い所帯。五将家のいずれにも積極的に組することはないが敵対も避ける風見鶏。後ろ盾がない人間たちがあつまっているだけ――とはいえ馬鹿にできない能力と権限を持った人間、組織があつまっているからこそ五将家に対抗できている」
 
「父上もここですかね」
 わかりやすい、政争嫌いの人間や確たる後ろ盾がない人間が集まっているという事だ。父の配下にいる衆民官僚、警察幹部達も“五将家”の介入(政争)で出生を阻まれた者達を父が後ろ盾となって少しずつ地盤を固めてきた。
「以前ならそうだが今は少々違う。だが私を含めて似たような人間が多いな」

「う」
 ここで正解をださなければ何某か出発前にやらされるだろう。

「例えば情報課次長、として特高憲兵に強い影響を持つ堂賀准将」

「あれ?堂賀閣下は義兄上(仮)の後ろ盾の一人かと」
 豊久に龍兵の情報を流したのも堂賀であるし、西原信置や利賀執政と接点を作ったのもそうだ。

「ある程度はな、だが守原の部下もいる。宮野木の部下もいる。それぞれに情報を流している。その裏にいるのは執政殿だ」

「あとは都護鎮台の佐久間中将、そして須ヶ川大将、軍部内のこの二人は政治的な動きを避けている」

「それに魔導院も一応ここに入れておくべきだろうな。五将家と距離をとり、今の執政を消極的に支持している。独立性が高いのは事実だが」

「う〜ん、諜報関係はだいたいこの派閥ですね」

 息子の答えに由房は嬉しそうに答えた。正解である。
「中立の寄合だからこそだな。どこかになびこうとしたら他の四将家が潰しにかかる。だからこそ中立だ」

「なるほど、なるほど」
 皇国の権力構造は極めて面倒な形を成している。誰が最高責任者であり、国家の頂点にいるのか――いや、頂点というのであれば皇主だがそれは実務からかけ離れたところに存在するからこその権威だ。

「またそれとは別に存在するのが近衛衆兵――親松宮実仁殿下の閥だな」

「北領で民の為に働いた唯一の将軍、焼け出された民草の為に兵を動かし、中立を掲げる美名津市長に避難民受け入れの直談判をした親王殿下。大した御方ですな」
 まぁ本人が知らなかったとはいえその難民たちを追い出し村を
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