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或る皇国将校の回想録
第四部五将家の戦争
幕間三 伯爵家の政界談義
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いる、まぁ具体的に言うと馬堂家だが――この話は後にしよう」

「さて、最後の五将家だがここが面倒なのだ――安東家についてはどの程度、知っている」

「四半世紀前、最後の軍単位を投入した大反乱で焦土化した東州の戦後復興を欲かいて一手に引き受けた挙句に予想外の損害に破綻しかけたちょっとアレな家」

「実際にあったことから歴史に切り替わるとバッサリ切り捨てるようになるんだなぁ」
そういやこの子が生まれたのは東州乱が終わって二年くらいだったナーと遠い目になる伯爵であった

「戦後処理がどうなったかは知っているかね」

「えぇと現当主に入籍した海良家の奥方が財政再建の采配を振るった事は」

「さて、まずは地理の話をしよう。東州は内地の南東方、龍州、虎城山地、そして駒州と東州灘を挟んで向かい合っている。護州も東海洋に港湾を持っているから北領へ向かう航路の途中にある。そして東州の経済復興には自前の家産では到底贖うことが出来ず外部から産業投資を誘致した」


「もちろん、それをうまく利用して東州の復興に道筋をつけたのは事実だ。海良家主導とはいえそれを成功させた安東家の手腕を侮ってはならないが――」
「だいたいわかりました」
 要するに皇都や地元の業者に口利きをして息のかかった業者を投入して影響力を広めたという事だ。特に東州を求めた安東家は重臣の領土拡大をもとめるこえを制御できていなかった程度には悪い意味で分権的である。

「天秤にかけ続けてきた代償であろうな、特に戦時に入ってから安東家の内部で意見が分かれているのは事実のようだ」

「まず我々の目から見ると目立っているのが安東家当主の叔父、東州伯爵・兵部大臣の安東吉光殿が主導の派閥だな」

「一番影響力がある分家筋ですか」
 先代当主の弟であり行政官としての評判も悪くない。よほど無害に徹するか
「うむ。近衛総軍司令官の神沢中将も吉光伯に近い。彼らは軍需産業振興のために東州へ投資を行い、反攻まで雌伏する事。そして水軍の東海艦隊と連携して陸水連携の軸となることで戦争の終結と戦後の勢力拡大を目論んでいる」

 単純明快だがそれゆえに人をまとめやすい、上手く練られているな、と葵は考えた。
「その為、護州と駒州の争いに関わる事を避けるべきだとしている。こちらは中央、皇都に勤務する将校、官吏、商人に多いようだな。さしずめ中央派といったところか」

 つまりは直接政争に関わっている人間たちという事か、と葵はあたりをつけた。

「そしてもう片方が安東家当主夫人の海良家が中心となる家内派閥だ。
東州において戦力と資産を温存しながら四将家と〈帝国〉に戦争を任せ、双方の消耗により戦後の主導権を握ることを主張している」

「成程‥‥‥」
 こちらは経済の現実と戦争の被害を数字
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