暁 〜小説投稿サイト〜
振り返ってはならない
第五章

[8]前話 [2]次話
「人気のない夜道を歩いていくか」
「塩と桃の木の木刀を持って」
「一人でな」
 二人ではなく、というのだ。
「そうしていくか」
「二人なら相手も用心して襲って来ない」
「そうだ、これは犯罪者でもそうだろ」
「人間の」
「それだけ撃退されたり逃げられたりする可能性が高まるからな」
 一人でいる方が危険だというのだ。
「だからな」
「そうですね、じゃあ」
「ああ、俺も巡査もだ」
「一人ずつですね」
「人気のない夜道を歩こう、そしてな」
 警部はチンにさらに言った。
「連絡は取り合うぞ」
「わかりました」
 このことも話してだ、そのうえでだった。
 警部はチンの話を聞きながら事件への対策を執りはじめた、スタッフを集めそうしてだった。各員に塩と桃の木で作った木刀を持たせて。
 一人ずつ夜道を歩かせた、だがこの時に警部は各員に強い声で言った。
「いいか、絶対にだ」
「振り向くな」
「どんな美人と擦れ違ってもですね」
「振り返ってはならない」
「そういうことですね」
「そうだ、あえて女性が絶対に夜は通らない様な道を歩くんだ」
 そうした夜道をというのだ。
「人気がなくて物騒そうな、な」
「そこに美人が通る」
「そうしたことはですね」
「まずない」
「そのことからもですね」
「わかる筈だ」
 警部は人間というか世の中の常識からも話した。
「女性は夜に絶対に来ない場所にぞっとする様な美人が来るんだ」
「それだけでおかしいですね」
「有り得ないことですね」
「しかしそれが魔物なら、ですか」
「有り得ますか」
「いいか、そしてだ」
 警部は警官達にさらに話した。
「擦れ違うその瞬間にだ」
「まさにその時にですね」
「塩を相手にかけてですか」
「桃の木の木刀で打つ」
「そうしますか」
「相手はそうすれば倒せるとこのことだ」
 女夜叉はというのだ。
「まず誤認の可能性はない筈だ」
「ですね、危ない場所に夜に美人が一人で来るか」
「娼婦なら立っていて声をかけてきます」
「そうした場所で」
「娼婦でもないですし」
「そんな不自然な相手だ」
 だからだというのだ。
「もうその瞬間にだ」
「擦れ違ったその時に」
「まさにですね」
「こちらから仕掛けてですか」
「倒しますか」
「そうすれば如何に人の血を吸って殺す魔物でもだ」
 そうした危険極まる相手でもというのだ。
「倒せる筈だ、だからいいな」
「わかりました」
「じゃあそうして倒します」
「そしてそのうえで」
「これ以上犠牲者が出ることを止めます」
「頼むぞ、俺も出る」
 警部自身もというのだ。
[8]前話 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ