第四章
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「パンも違いましたね」
「この様なパンははじめてだった」
王がカトリーヌの横から答えた。
「まさにな」
「そうですね」
「ジャムもチーズもな」
「全てですね」
「バターも違った」
それまでがというのだ。
「まさかここまでとはな」
「ではこれからはです」
「妃がだな」
「他の料理も紹介させて頂きます」
「うむ、頼む」
王は目を輝かせてだった、カトリーヌに応えた。そして実際にだった。
カトリーヌは日々フィレンツェの料理と作法を宮廷で紹介した、王も廷臣達も誰もがその料理に舌鼓を打った。
カトリーヌ自身もだ、満足した顔で彼女のフィレンツェから連れて来た者達に話した。
「全く、何とかですね」
「よくなりましたね」
「宮廷の料理の状況が」
「フィレンツェの様になりましたね」
「あの様な料理ではです」
当初のそれはというのだ、フランスの宮廷の。
「到底食べられません」
「はい、我々もです」
「あれはないと思いました」
「噂には聞いていましたが」
「あれ程までとは」
周りの者達も言うのだった。
「あまりにも酷かったです」
「あれではお妃様のお口に合いません」
「我々から見てもでは」
「あまりにも」
「貴方達を連れて来てよかったです」
カトリーヌはしみじみとして述べた。
「ではこれからも」
「はい、美味しいものを出していきましょう」
「フィレンツェの様に」
「贅を尽くした」
「それを出していきましょう」
「そうです、美食あってこそです」
カトリーヌは赤いワインにオレンジを絞った汁を入れたそれを口にしつつ言った。
「人は生きられるのですか」
「その通りです、では」
「今宵もですね」
「微笑をお出ししますか」
「当然です」
一も二もない言葉だった。
「さもないと私も生きていられません」
「あの様な料理を口にしては」
「到底ですね」
「そうです、ですから」
それ故にというのだ。
「そうしていきます、いいですね」
「では今宵も贅を尽くして」
「そうした料理をお出ししますので」
「お楽しみ下さい」
「それでは」
カトリーヌは強い声で頷いた、そしてだった。
実際にこの夜も美食を楽しんだ、王や廷臣達に紹介しつつ。カトリーヌは来る日も来る日もそうして過ごした。
それが気付けばだった、何時しか。
フランスの宮廷にフィレンツェからもたらされた洗練された美食が定着した、それがフランス料理となった。
一人の王妃の舌がこの国の料理を作った、若し彼女がフランスに来なかったらフランス料理は存在しなかったかも知れない、こう思うと実に面白い。そう思い書き残すことにした、サン=バルテルミーの虐殺を引き起こしてしまい陰謀家でもあったカトリーヌ=ド=メディチだ
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