第三章
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「それでついついね」
「飲まれてですか」
「二本で止めるよ」
「当然です、ただ」
「ただ?」
「ご夕食の時はワインでしたね」
「二本空けたね」
自分でもそのことはわかっていた。
「いつもだけれどね」
「お昼も一本空けていましたが晩もそれで」
「今もだからね」
「明日の朝大丈夫ですか?」
妻が気にしているのはこのことだった。
「二日酔いは」
「二本なら大丈夫だよ」
ブラウヒッチュは自分の酒量を弁えて言った。
「だからね」
「二日酔いにはですか」
「ならないよ」
「だといいですが」
「三本なら危ないけれどね」
言いながらどんどん飲んでいく、二本目も気付けば半分以上飲んでしまっていて勢いは衰えていない。
「まだね」
「二本ならですね」
「大丈夫だよ」
「では三本はですよ」
「飲まないと思うよ」
「思う、ですか」
「いや、美味しいからね」
それでというのだ。
「どうもね」
「全く、悪酔いして乱れないのはいいですが」
コジマはやれやれといった顔でにこにことし飲み続ける夫に言うしかなかった。
「気をつけて下さいね」
「わかってるつもりだよ」
「そこでつもりと言われるのがそもそも駄目です」
コジマはこう言う、だがそれ以上は言わず気付けば夫は二本目を空けて三本目も飲みだしていた。
そして翌朝だ、ブラウヒッチュは起きて同じベッドで寝ている妻に言った。
「これはね」
「頭がですか」
「痛いよ、身体も辛いよ」
「だから言ったのです」
コジマは如何にも苦しそうな夫に厳しい顔で言った。
「本当に」
「いや、美味しくてついついね」
「お酒が過ぎます」
厳しい声での注意だった。
「本当に」
「ううん、あまりにも二日酔いが酷いから」
苦しみながらまだ言う夫だった。
「ちょっとお風呂に入って来るよ」
「まずはお水を飲まれてです」
「そしてだね」
「サウナにお入り下さい」
「そこでお酒を抜いて」
何故サウナに入るのかは言うまでもなかった。
「そうしてだね」
「はい、水風呂にも入られて」
「またサウナに入って」
「お酒を抜かれて下さい」
「すぐにそうしてくるね」
「全く、だから昨晩申し上げたのです」
ベッドから起き上がってバスルーム、かなり広くしかも凝っているそこに向かう夫に対してさらに言った。
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