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魔法少女リリカルなのは 〜最強のお人好しと黒き羽〜
第四十話 最果ての果て
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師は渾身の想い込めて、その一撃を振るう。

 振り下ろされる、世界をも燃やし尽くす黒炎の刃。

 互いに最短距離で迫る一撃は――――黒炎の熱量が一番速い。

 そもそもアイツはその能力上、剣が当たらずともその熱量で相手を燃やし尽くすことができる。

 そこに剣を振り下ろして熱を前方に飛ばすことができたのだ。

(――――ダメだ、足りない!)

 俺は悟る。

(これじゃ、足りない!)

 目の前から迫る、真っ黒な炎

 肌を焼き、燃やし尽くさんとする圧倒的な熱量を前に、

 俺は、敗北を悟った。

 振り抜かれた黒炎の刃に迷いはない。

 あれは間違いなく俺の頭からつま先を燃やし尽くす。

 やはり、アイツは強い。

(――――だからどうした!?)

 そんなことは最初から分かってる。

 自分が凡人で、相手が天才だってことくらい最初から分かってる。

 相手が強く、自分には劣っているものだらけで、誰かの力を借りないと挑むことすらできない弱者であることくらい、分かりきってる。

 だけど、俺はその事実から目を背けたことは一度もない。

 むしろずっと向き合ってきたんだ。

 自分の弱さとずっと、ずっと向き合ってきた。

 家族一人守ることのできない弱さを、

 大切な人との約束一つすら守れない弱さを、

 自分の命を大切にできない弱さを、

 でも、それと向き合って、挑み続けていたからこそ今があるんだ。

 ならば知ってるはずだ。

 この状況で何を選ぶべきか、本能でわかるはずだ。

 何が足りない?

 何をすればいい?

 アイツの一撃よりも速く打ち込むには、あと一歩足りない。

 そこに踏み込めさえすれば、俺の一閃がアイツを斬り裂くことができる。

 だけど踏み込めば、磁場を狂わすほどの熱量に焼かれ死んでしまう。

 まさに肉を切って骨を断つ行為。

 命を捨てて命を斬る。

 だけどそれしかないならやるしかない。

(――――怖いな)

 挑もうとして、抱いたのは恐怖だった。

 この一歩を踏み出せば、俺は死んでしまうだろう。

 アイツを倒した代償はとても大きい。

 だけど、誇って死ねるだろう。

 限界を突破したのだから、恥はない。

 だけど、もう二度と会えなくなるんだよな。

 なのは。

 フェイト。

 雪鳴。

 柚那。

 ユーノ。

 アルフ。

 クロノ。

 リンディさん。

 ケイジさん。

 エイミィさん。

 リンシアさん。

 そして――――姉さん。

 せめて死ぬ前に、みんなの笑顔が見たかった。

 
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