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魔法少女リリカルなのは 〜最強のお人好しと黒き羽〜
第四十話 最果ての果て
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 だって俺には、その壁を一緒に突破してくれる仲間がいるから。

 第伍の天流と第陸の天流だって、柚那と雪鳴がいなければ生まれない剣技だった。

 それがなければこの戦いを勝利することはできなかった。

 これがアイツと俺の差だ。

 背負うものがあるから、人は強くなれる。

 その重みがあるから浮つかず、真っ直ぐ大地を踏みしめることができる。

 何も背負っていない、個人だけの戦いしかできないアイツに負ける道理はない! 
 
 今度こそ、終わりだ。

 アイツを貫いたと言う確かな手応えを感じながら、俺はアイツの背を通り過ぎた先で着地する。

 刀身の熱と魔力を振り払い、鞘に収めて一息つく。

「まだ……だぁっ!!」

「っ!?」

 掠れながらもハッキリと聞こえた怒声に、俺は驚きながら振り向く。

 俺は間違いなくアイツを倒したはずだ。

 最強最高の一撃を持って……それなのに、アイツは全身が深い切り傷だらけでなのに、全身から溢れんばかりの鮮血を流しているのに、ふらつきながらも立っていた。

 そして右手で剣を握り締めていた。

「最後の一滴まで振り絞って、絞りきって、てめぇをぶっ殺すまで、負けられねぇんだよぉ!!」

 悲痛なまでの叫び声に応えるように、ムスプルへイムの黒炎が糸のように伸びて、アイツの全身を包み込む。

 まるで炎は、彼に力を授けようとするかのようだ。

 そしてアイツの全身は頭から足の先まで、漆黒の炎に包まれた。

 まるで自身すらも、神話に登場した炎の化身に至ったかのように、彼はその姿に名をつける。

「――――スルト。 レーヴァテインを握り、世界を焼き尽くした巨人の名だぁ!!」

「っ!?」

 それはまさに今の彼を表すに最も相応しい名前だと思った。

 すでにムスプルへイムの熱がこの空間を支配しているのに、アイツの全身から溢れる炎の熱が更に空間の光景を歪める。

 超至近距離ですら蜃気楼が起こって見えるほどの温度。

 そして灰や塵を引き寄せる、引力を生み出すほどの磁場の乱れを生み出す火力。

 それは間違いなく、アイツが死の淵で生み出した最高にして最強の魔法だ。

 さすがは天才、持ってる物が違う。

 一回殺した程度じゃ到底振り切れない。

 底無しの才能だ。

 そしてアイツはいま、自身が持ってる全ての才能にその身を委ねた。

「磁場すら乱れるほどの熱量を持って、俺の刃が触れた瞬間に消し飛ばすつもりだな?」

「そういうこったぁ!」

 単純にして、厄介な力だ。

 もはやアイツに自分から突撃するような体力は残されていないだろう。

 それだけのダメージを与えた自負がある。

 
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