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とある3年4組の卑怯者
26 回顧
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に何かしようと消しゴムをあげたり今日も困っているところを助けようとしたんだ」
 あの藤木の台詞にある「その人」というのが紛れなく自分に当てはまった。
(え?じゃあ、藤木君はずっと私の事が好きだったってことなの・・・?)
 笹山は動揺していた。そして藤木の話の続きを聞いた。藤木は好きだっていうと自分に嫌がられるかもしれないと思っている。そして自分よりも花輪や大野、杉山といった男子が笹山にはお似合いだと言っていた。そして、藤木は泣きながら部屋から出て行ってしまった。
 確かに花輪はお金持ちでかっこいいし、女子からの人気も抜群だ。大野も杉山もスポーツ万能で頼りがいがある。しかし、それでも笹山には絶対という好きな人がいるわけではなかった。誰にでも平等に接しようとする気持ちがあるためである。しかし、笹山にとって一番誰よりも気にかけ、思いやろうとしていた相手は藤木だった。その藤木が自分を好きになっていたのだ。なぜ今まで気づかなかったのか、笹山は藤木に済まなく思っていた。

 藤木は卑怯じゃない。気が弱いのだ。笹山はそう思っていた。だから嫌われるのが怖くて藤木は自分に好きだと言えなかったのだ。「好き」という代わりに自分に何かプレゼントをしたり、(大抵は失敗に終わるが)親切な行為をしようとしていたのだ。さらにリリィが転校してきてから、笹山は藤木がリリィが好きだという事を知ってから勝手にその恋を応援していた。藤木はどちらを取るか思い悩んでいたことを知らずに。

 次の日学校で会ったら藤木を少しでも楽にさせようとした。自分は藤木は優しいところがあるから嫌いではない。むしろ、好きだと知って嬉しかったのだと。しかし、歯医者によって遅刻した自分に多くの友人が心配してきたので藤木に近づくことができなかった。そして、次の休み時間、藤木は堀内と乱闘を起こしていた。笹山は自分を心配してくれ、好いている藤木にこれ以上傷ついてほしくなかった。だから必死で「もうやめて!!」と叫んでしまった。藤木は困惑していたが、堀内はあたかも笹山の味方をしているような発言をした。しかし、事の元凶は堀内だ。そんな人に味方になっても嬉しくはなかった。藤木のほうが気の毒だった。だから堀内をビンタし、罵倒した。そして堀内は自分に襲い掛かる。しかし、藤木が守ってくれた。藤木は自分が好きだから、大切にしてくれているから守ってくれたのだと思った。

 藤木の本心を知った今、これからも藤木の友達であり続け、そして藤木の事を大切に思いやりたい。そして自分とリリィ、どちらかを選ぶ時を待つ。笹山はそう決意した。

「かず子、どうしたの?」
 母に呼び掛けられ、笹山は現実に戻った。
「ううん、ちょっとボーっとしてたの」
「そうだったの。マフィン、上手く焼けたわよ」
 オーブンの蓋を開けるとマフィンの匂いが
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