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魔法少女リリカルなのは 〜最強のお人好しと黒き羽〜
第三十八話 限界
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手を伸ばさなくていい。 掴むことができたものを大切にしていけばいい」

 雪鳴の考えに、反論の言葉は誰ひとりとしてでなかった。

 みんな、黒鐘が現在に至るまでの出来事を知っているから。

 彼が失ったものを思えば。

 彼が守っていったものを思えば。

 そして彼と共に戦ってきたからこそ。

 ここをゴールにすれば、彼はもうボロボロにならないのだとしたら。

 自分の過去を理由に、自分で自分自身を傷つけないで済むのなら。

 この運命は、むしろ早いうちにきるべきだったのではないだろうか。

 今まで駆け抜けていった彼を嘲笑う人は絶対にいない。

 むしろみんなの誇りだ。

 憧れでなくなることはないだろう。

 ならば、頂きに至った彼を哀れむのは無礼に当たるだろう。

 この勝負の結果を受け入れ、終わりにさせよう。

 沈黙が包む中で少女たちの答えが固まり、ケイジが転移場に向かうために振り返った。

 そして静寂がケイジの足音で終わろうとした――――その時。


 黒炎で埋め尽くされたモニターに、一筋の光が鉄を擦れ合わせた甲高い音と共に映し出され、管制室を照らした。
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