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魔法少女リリカルなのは 〜最強のお人好しと黒き羽〜
第三十八話 限界
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 ケイジの語った現実に、少女たちは言葉を失い、俯く。

 自分たちの限界は遥か遠くで、天才の分類だから大丈夫。

 それを安心しきれないのは、彼を置いていくからだろうか。

 これ以上の努力に意味がない。

 そんな現実を突きつけられた彼を思うと、とてもじゃないが喜べない。

 だけど、

「これで、よかったかも」

 雪鳴はゆっくりとそう言った。

 それに真っ先に反論したのは彼女の妹、柚那だった。

「なんで!? お兄ちゃん、あんなに剣術を覚えるのが好きだったんだよ!? 道場でお父さんと戦うお兄ちゃんの姿、一番よく知ってるのはお姉ちゃんでしょ!?」

 柚那は怒りを込めて叫んだ。

 雪鳴と姉妹として育った中で、恐らく一番本気で怒った瞬間だった。

 その姿に驚く雪鳴だったが、しかし抱いた感情は変わらない。

「黒鐘が剣術を愛してるのは知ってる」

「ならどうして!?」

「でも、今の彼は自分のために剣術を覚えていない。 彼が強くなるのは、誰かのため。 彼が悩むのも、誰かのため。 命をかけているのだって、全部……彼は誰かを理由に生きてる」

 柚那の言う通り、五年前に逢沢家の道場で師範である父と戦っていた黒鐘の剣術に取り組む姿は、とても楽しそうなものだった。

 天衣無縫。

 そんな言葉が似合うほどに、彼は純粋で真っ直ぐだった。

 だけど今の彼は違う。

 色んな技を覚える楽しさよりも、今より強くなりたいと必死に強さを追いかけていた。

 家族を失った悲しみから立ち直る過程で、

 管理局に所属して自らの技術を誰かを救うことに使うことになったことで、

 彼は自分のために魔法を、剣術を楽しむ心を忘れていた。

 それで救われた人は多いだろう。

 フェイトだってその一人だ。

 そして限界を迎えたとは言え、達人に至った彼なら変わらずに多くの人を救えるだろう。

 ……だけど、限界だって分かったなら、そこで諦めても良いと雪鳴は思った。

「黒鐘はもう、十分に走った。 誰かのために、必死に戦い抜いた。 これから何十年とかけて育んだはずの可能性を使い尽くすまで」

「っ……」

 フェイトは大きく跳ねる心臓に痛みを覚え、右手で押さえる。

 彼が自分のために全ての可能性を費やしてくれた。

 それは胸が熱くなるほど嬉しい。

 だけど同時に、自分の人生を投げ捨ててまで戦わせてしまったことへの申し訳なさが湧き上がって、胸を締め付ける。

 自分は彼の人生を費やしてまで救われるべき存在だったのか。

 そう問いただしたくなるほどに、罪悪感が支配する。

「だからもう、彼は休んでいい。 これ以上、誰かを助けるために
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