プロローグ 白い少女と黒い猫
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さつき絶賛大混乱中である。
「これ。お姉さんの」
そんな絶賛大混乱中の彼女に向かって、両手を掬い上げるようかに差し出す少女。
その手には漆黒の携帯電話が乗っていた。
それは……黒い不思議な光沢を持った、デザインの良い携帯電話。艶やかなその表面を見ていると、さつきは何故だか吸い寄せられるような気分になっていた。
「私の……じゃない」
さつきは携帯電話なんてそんなハイテクな機器は持っていない。
最近、世の中が物騒になってきたとはいえ、子供……小学生に持たせる家庭はまだまだ少ないのが現状だ。
それに、かなりの機械音痴であるさつきには、宝の持ち腐れになる、という父親の意見もあり、連絡は専ら自宅の固定電話か、道端にある公衆電話で取ることになっている。
だから、さつきは差し出されたそれは自分のではない、と少女に告げたのだが、少女は首を左右に振って、両手をさらに高く差し出してきた。
「ふふっ、はい。これはお姉さんの『Dフォン』だよ」
「ディー……フォン?」
「そう。運命を導く為の、そして、運命から身を守る為の。お姉さんだけの端末。お姉さんはもうすぐ、『オバケ日記』を手に入れると思うけど、『オバケ日記』は伽?子お姉さん専用の……だから……それとは別に持っておいた方がいいよ」
『伽?子』という名前が出てきたことにさつきは驚愕する。
「伽?子って……もしかして、ママのこと? あなた、ママのこと知ってるの?」
「ふふふっ、うん、知ってるよ。とーても、よく、ねぇ」
「ディーフォンとか、日記とか、今何が起きてるのか……とからよくわかんないことだらけだけど、ママに関係することなのね?」
さつきは少女に問いかけるが、少女は……
「きっとお姉さんを助けてくれるよ。多分だけどね」
さつきのその質問には答えずに、有無を言わせないほど強い言葉で、さつきの手に『Dフォン』を握らせた。
Dフォンを握り締めたさつきは、手に馴染む質感と、見ているだけで心惹かれるデザイン、持っているだけで落ち着いてくる感触に、不思議と違和感を感じずに受け入れていた。
不思議なことに……確かにこれは『自分の』だと思えてくるのだ。
「そのDフォンには、お姉さんと因果……縁がみたいなものが繋がっているロアを探してくれるから。大事にしないとダメだよ?」
「……因果? ロア?」
「そう。因果があるロアが出す磁場……電波みたいなものを受信することで助けてくれるの。試しに、ちょっとあっちの方に向けてみて?」
少女が指差した方向は学校の校舎だった。
「あの校舎に何かあるの?」
さつきはドキドキしながら、尋ねた。
内心、新校舎の方でよかった。旧校舎の方だったらどうしよう、とドキドキしっぱ
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