プロローグ 白い少女と黒い猫
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「怖くなんかないけど……??」
弟へ弁明しようとしたさつきは、自分の左側。つまり、側道の左を何かが横切ったような感じを感じてしまった。それは黒い影のように見えた。
(見間違い? え、でも……)
さつきはトラックの窓から顔を出して、後部を確認した。
(え?)
そこにはもちろん誰もいなかった。人っ子一人いなかったのだ。
さつきが気のせいか、とホッと胸を撫で下ろしたその時だった。
トラックの前方、窓ガラスに白い無数の手が現れたのだった。
「きゃ、きゃーーー!!!」
さつきの叫び声に運転手が驚いたのか、トラックは急ブレーキをかけて停車した。
揺れる車内でさつきは頭を手で覆い、身を竦める。
ガタガタ震えながら、停車し動かないままの車内に疑問を浮かべる。
(……なんでみんな騒がないのよ? この中で一番怖がりそうな敬一郎が声を上げないなんて。そんなの絶対、ぜーったい変よ。ありえない!!!)
恐る恐る顔を上げると……そこには誰もいなかった。前方の窓ガラスに視線を向けたが、さっきまで確かにそこにあった無数の白い手もなかった。それだけではない。
トラックの運転手も、父親も、怖がりな弟も、黒猫カーヤも誰の姿もなかったのである。
「あれ? 運転手さん? パパ? 敬一郎? ちょっと……なんでみんないないのよ?
パパ! 敬一郎! カーヤ? なんで? なんで誰もいないの? どうなってるのよ!」
さつきは頭がこんがりそうになる。何が起きてるのかわからない。さっきまでいた大人達はあんな短い時間でどこかに行った? いやいや、トラックの運転席から出るにしろ、外に出るにはドアを開閉しないといけないはずだ。開閉音は聞こえなかった。助手席に座っていたさつきが気づかないはずがない。それとも……さつきが感じないだけで、かなりの時間が経過していたのか?
いや、それにしたって、弟や父親が何も告げず自分を置いていなくなったなんて……そんなことは認めたくない。
(夢? これはきっと夢よ。そうよ。悪い夢でも見てるのよ。そうに違いないわ。よし、早く覚めろ!)
さつきは瞳を閉じて祈った。これが夢なら早く覚めますように……と。
____その時だった。
「お姉さん」
突然、さつきを呼び止める声が聞こえた。恐る恐る声がした背後を振り返ると、そこには、後部座席の上にちょこんとまるで人形のように座る、全身白ずくめの小さな女の子がいた。
「キャーーーーー!!!」
さつき、本日二度目の大絶叫である。
あまりの恐怖と驚愕のせいで、さつきの頭の中は真っ白に燃え尽きていた。立て、立つんだ、さつき!
まだ恐怖は終わってないぞ!
(何よこれ何よこれ何よこれ何よこれ??)
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