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魔法少女リリカルなのは 〜最強のお人好しと黒き羽〜
第三十六話 決戦前夜
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 怒りという名の、殺意を持った強い感情の渦。

 フェイトをこんなにも傷つけた相手への怒り。

 それをすぐに気づいてやれなかった自分への怒り。

 そして、こういう人が生まれてしまう、この世界の理不尽への怒り。

 様々な怒りが渦巻いて、気が狂ってしまいそうになる。

 だけど、目の前にいるフェイトと言う少女を見つめているうちに、怒りは収まっていく。

 消えないけど、今は他所へ置いていけそうだ。

「フェイト」

「な、なに」

 急に呼ばれて驚いたのか、彼女の身体がビクッと跳ねた。

「ありがとう。 もう、いいよ」

 俺はフェイトに握られていた腕を解いて、自分の着ていた青のパーカーを脱いで、フェイトに着させる。

 俺の身長に合わせたパーカーはワンピースみたいにフェイトの下着も、体も隠してくれた。

 もう十分だ。

 これ以上、彼女の姿を晒し続けるわけにはいかない。

 例え俺とアルフしか見ていないとしても、もういいはずだ。
 
 もう十分、フェイトは傷ついたはずだ。

 だからこれ以上、

「もう、自分で自分を傷つけなくていいよ、フェイト」

「っ!」

 我慢の限界だったのだろう。

 フェイトは俺の胸に抱きつき、泣き出した。

 胸のあたりに感じる熱。

 涙の熱、吐息の熱、嗚咽の熱、そして、心の熱。

 俺の胸をギュッと握りしめる彼女の手は、まるで救いを求めるように、縋り付くように、俺の服を力強く握り締める。

 そんなフェイトの姿に俺の心も耐え切れず、彼女を両腕でギュッと抱きしめる。

 そうしてフェイトの嗚咽は胸の中で潜篭って、部屋中に響き渡ることはなかった。

 俺とアルフの間だけに、フェイトの悲しみは響き渡った。

 俺はフェイトの背中を優しく撫でながら、心の底から願った。

 早く、

 一日でも早く、

 一時間でも早く、

 一分、一秒でも早く、

 この子の抱えているものが、消えてくれますようにと。




 それから俺は、泣き止んだフェイトとアルフと一緒に食事をとったあと、今回の事件までの経緯を聞いた。

 フェイトが辛くなればアルフが代わりに話し、気づけばこの日は二人と一緒に最後まで過ごした。

 そして過ごす中で俺は、一つの決意を抱いた。

 明日、全てを終わらせよう。

 アマネの中に保存されたジュエルシード。

 それら全てをかけて、戦おう。

 そう。

 この事件を終わらせる、最後の戦いをしよう。




「待ってたぞ。 イル・スフォルトゥーナ」

「待たせたなぁ、小伊坂 黒鐘ぇ!」



 早朝。

 水平線の
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