第21話『奪われた流星の丘アルサス〜忍び寄る魔王の時代』【アヴァン 】
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『なぜ』――――とヒトは一生の内に感じることは多々ある。
思いがけない行動。起こり難い事態。描ききれぬ現象。
想定外はともかく、予想外のそれらに『理由』を付けることは難しい。
ひとりの『青年』は必ずしも『アルサス』を救う必要などなかったはずだ。
同時に、ひとりの侍女も『アルサス』を訪れる必要もなかったはずだ。
それでも、ひとりの『傭兵』には――はっきりとわかっていた。
力無き侍女はアルサスの領主代理として、その地に住まう民を護る責務があり――
大義無き青年は『助けて』という誘惑に類する甘声に抗えない。
だが、それでも『なぜ』と思わざるを得ないものがいた。
ザイアン=テナルディエ。
彼は以前に一人の青年の戦いを見た。黄金の鎧纏いし勇者の聖戦を。
どういうわけか、彼はその『人を超越した力』を即座に振るおうとせず、まるでガラス細工を扱うかのように、己の力を振るおうとする。
仲間を気遣うのは分かる。だけど、敵の生命さえも大切に扱う青年の真意は分からない。
―――――――――何故だろう?
銀閃の風姫が自軍の地竜を真っ二つに処断した、至宝アリファールを持っているにも関わらず。
一騎当千……などというぬるい言葉では片付けられまい。
戦場を闊歩できる力を持ちながら、約束されし勝利の剣さえもありながら。
銀閃竜の牙を携えしその青年は告げた。
――俺は敗北も勝利も望んでいない。
――俺が『流星』に望むのはただ一つ。戦争の早期終結。
そして、本来なら『敵‐カタキ』同然である自分を信じて、父上の居座るアルサスへ向かおうとしている。
人は生まれる『何故』に理由を付けようとして、相手の意図をたどろうとする。
己と敵。
利益と損害。
思考と行動。
美徳と大罪。
原因と結果。
温情と打算。
結局理由を求める基礎は、生命が『相手より優れていたい』・『自分より劣っているか、いないのか』という、己の保身と安定を求める故の生理現象かもしれない。弱者と強者の輪廻……『弱肉強食』という摂理もまた、生命体が『生きる』という営みをするうえで、避けては通れない呪縛の一つであった。敵と認識し、狂気に堕ちたその先で、やがて『生きる』ことに対して『何故』を問う者も次第に現れた。
カルネアデス――生きる意味を問う一枚の舟板。
地球上たった3割の大地にて、肺呼吸を行う生命体で満たされている現実。火山活動と地殻変動を幾重にも繰り返し、元々は一枚の船だった『大陸』もやがて『王制国家ブリューヌ』・『列州国家アスヴァール』・『東方国家ヤーファ』と名付けられる土地を始めとした7つの舟板に分断された。波間に漂う舟板のような残された土地を巡り、敵と認識し合ったヒトは剣と馬を操り、生存権を巡って争いを始めていっ
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