第21話『奪われた流星の丘アルサス〜忍び寄る魔王の時代』【アヴァン 】
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「フィーネの意見の延長だけど――もし、全軍でアルサスに入った場合、テナルディエ公に気づかれて身を隠されたら、本当に手の打ちようがなくなる。兵力1000.俺達はこれで全軍だからな。できる事なら犠牲は出したくない。まずは俺が先行すべきだと思う」
やはり単独で赴く意思は変わらないのかと、リムアリーシャは凱の表情を覗き込んだ。
かつて、銀の流星軍はガヌロン公爵の降伏勧告を受けた。その時、単独でガヌロン公爵軍の使者として訪れたのがグレアスト侯爵だった。
(グレアスト公の時と同じように、軍全体の存在を悟らせないためなら『良策』なのですが――ガイさんを失う事になれば『愚策』以外ありません)
僥倖と見るべきでしょうか……と別の側面で考えてみる。
誰かを犠牲にして勝利を掴むつもりなど凱にはないが、悠長に時間をかけられないのも事実だ。手をこまねいて状況をより悪化させることも避けたい事態の一つ。
それは決して『甘え』じゃない。今後の展開上で必要なことだから。
決断―――――あとは覚悟するだけだ。
「リムアリーシャさん、マスハス卿、オージェ子爵、これは考えようによっては好機だと俺は思います」
話し合いをするにしても、決着をつけるにしても、相手の総大将がいるアルサスはまさに最良の時だ。もはや迷っている時間はない。
もし、ザイアンのいう事が偽りだとしたら即座に撤退すればいい。単独で向かう事を想定するならば、なおさらだ。
「……わかりました。ここはガイさんの提案に賭けてみましょう。確かに時間はそう多く残されていません」
リムとマスハスは顔を見合わせ、銀の流星軍中枢の人間に告げる。
「長がたに異論なくば、銀の流星軍による『第二次アルサス奪還作戦』を決行します!」
他国から見れば、再びブリューヌへ攻め込む
第二次アルサス奪還作戦――それは、先行隊の凱一人で現地を訪れて状況確認後、銀の流星軍が時間差でアルサス突入する。
ただ遠方の地にて大軍を率いるわけにはいかない。そこでリムは順序立てて説明する。
まず、連れていく兵力は1000。最適な数字というより、凱の言う通りこれで全軍である。敵陣へなだれ込む速度と貫通力を維持するならば、これ以外の数字はない。かつてティグルがエレンに頼み込んでアルサス奪還時に引き連れた兵力と同等の数字だ。
一機当千の『実力』の凱と、文字通り1000の『物量』のみが、彼等に残された最後の武器。失敗は許されない。
「進入拠点は『最も防衛力の装薄』なヴォージュ山脈からとします」
一本道のヴォージュ山脈を抜け、進入と同時に銀の逆星軍の退路を断つ。国境の役目を果たす山脈は『流星』の降り注ぐ進路を欺いてくれるはず。凱はリムアリーシャの軍略論理に思わず気圧された。艶のない金髪も相まって、どこ
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