第21話『奪われた流星の丘アルサス〜忍び寄る魔王の時代』【アヴァン 】
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ある豊かな楽園を築く『雷禍』の力学。
天然自然の建造物における測量技術で、仮想空間と現実物体の立体構造を形成する『虚影』の力学。
無機物層が減別、交換、分改の解体循環を得て、これら六つの基礎を建設する『羅轟』の力学。
これら力学を束ねる英知の『王』こそが、『何故』と混迷に惑うヒトを救える英雄へ至れることを、黒竜の化身は信じて疑わなかった。
『無知』そのものが罪だ。ヒトが、滅びゆく自然の叫び声に耳をふさぎ、既に犯した七つの大罪から目を反らし続ける者達の存在そのものが。
――――『だから』なのだろう。戦姫に竜具を与え、力学の自浄作用をもたらす知識にして竜技……たった一振りの『爪』を与えたのは。
汚染された大気を浄化するには、どうしたらいい?
答えは簡単だ。『大気ごと薙ぎ払ってしまう』のが一番。
太陽の光を遮る、空に舞う粉塵を沈下させるにはどうしたらいい?
答えは簡単だ。『空さえも穿ち凍てつかせる』のが一番。
すなわち――
大気ごと薙ぎ払え――レイ・アドモス。
空さえ穿ち凍てつかせよ――シエロ・ザム・カファ。
我が前に集え煌めく波濤よ――ファルヴァルナ。
双焔旋――フランロート。
天地撃ち崩す灼砕の爪――グロン・ラズルガ。
虚空回廊――ヴォルドール。
爪裂の零――ゴルディオーラ。
そうだ。これらの爪があれば、ヒト同士の紛争で汚染された大陸を浄化できる。例え現在を恨まれようとも。
300年前――『乱』の末、『王』となりて幾星霜。『今』を失おうとも、『末』の世の為。
黒竜の化身が竜具の『柄』に……そのような『詩』を刻んだのは何故だ。
我が意に従わず、自らの手で滅ぼしたテナルディエ家への贖罪なのか?
まだ見ぬ理想世界の為に準じた、彼の祖にして素の願いなのか?
何故――――それは、生きる意味を問う永遠の問答であり、未来果てぬ永久の呪詛でさえあった。
【銀の流星軍領地・指揮官幕舎】
「本気なのですか!?あなたは!」
ジェラール=オージェは糾弾した。
彼だけじゃない。父君であるオージェ子爵も、リムアリーシャも、マスハス=ローダントも、銀の流星軍の中枢はそろいもそろって声を上げた。
「相手を信用しすぎです!アルサスに向かうとしても、『個』ではなく『軍』としていくべきです!」
彼女からは厳格な教師の態度で言われた。何らかの罠の可能性を捨てきれず、油断して凱を失う愚は避けたいリムアリーシャ
「危険じゃ!今のアルサス……いや、ブリューヌ勢力圏はガイ殿が想像している以上に魔の巣窟となっておる!」
ぐんずりとした体格の壮年貴族から、かつ
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