暁 〜小説投稿サイト〜
真田十勇士
巻ノ百四 伊予へその十

[8]前話 [2]次話
「思わなかったわ」
「そうじゃな、しかしな」
「今は思う、そして猿を超えてじゃ」
「わしもじゃな」
「超えるわ、山の神よりも強くなり」
 そしてというのだ。
「殿の御為に働くわ」
「そう考えておるな」
「これまで以上にな、しかしな」
「しかし?」
「もう幕府はじゃ」
 それはというと。
「固まりつつある」
「そうか」
「わしもそう見るし」
「天下の流れがか」
「そうなってきておるわ」
 まさにというのだ。
「流れがな」
「ではか」
「豊臣家の天下はじゃ」
 それはというのだ。
「もうなくなっておるしじゃ」
「これからもじゃな」
「戻らぬわ」
「そういう流れか」
「大体じゃ」
 大介は猿飛にまた言った。
「お拾様だけじゃな、豊臣家は」
「最早な」
「若しお拾様に何かあればじゃ」
 まだ子供と言っていい彼がというのだ。
「豊臣家は誰もいなくなるな」
「お家断絶か」
「そうした心許ない家じゃ」
「そうした家ではか」
「例えあの富と大坂城があってもじゃ」
 豊臣家にはまだこうしたものが備わっている、つまりそれだけの力がまだあるというのだ。
 だがそれでもとだ、大介は言うのだった。
「しかしな」
「もうか」
「そうした状況ではな」
「天下はか」
「戻らぬわ」
「天下も人おってこそか」
「まだ子供のお拾様だけでどうなる」
「そう考えると徳川家か」
「大御所殿は身内も多い」
 秀頼が全く持っていないそうした者達がというのだ。
「家臣の方々だけでなくな」
「では」
「うむ、だからじゃ」
「徳川家がな」
「天下を定めるか」
「せめて関白様がおられれば」
 ここで幸村が言った。
「違ったであろうな」
「あの方ですか」
「そうじゃ、あの時のう」
 幸村は目を閉じ悔やむ顔になって述べた。
「拙者が関白様をお救いしていれば」
「高野山においてですな」
「無理にもな」 
 秀次の意志をあえて無視してだ。
「そうしていればな」
「その時はですな」
「こうなっておらんかったかもな」
「そうですか」
「家も天下も人あってこそ」
 大介と同じことを大介自身に言う。
「まさに」
「その人がおらぬのでは」
「どうにもならぬ」
「だから豊臣家はですか」
「ああなった、もうこうなってはな」
 豊臣家はというのだ。
「せめてお拾様が長生きされ」
「そうしてですな」
「その長生きの中で出来る限りな」
「お子をもうけられるしかですか」
「ない」
 そうだというのだ。
[8]前話 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ