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渦巻く滄海 紅き空 【下】
四 毒媒蝶
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吹き荒れる砂嵐が、止まった。

やむことのない風がピタリ、と一瞬治まったのは何かの前触れか、兆しだろうか。


台風の目にいるかのような一時の静けさの中で、倒れ伏したカンクロウの顔を、彼は片膝立ちで覗き込んでいた。


暫しの戦闘を繰り広げ、毒により力尽きたカンクロウの首元に手を翳す。

それだけで注入された毒の量が如何ほどのモノか推測した彼は秘かに眉を顰めた。
三日ともたずに済む量ではなく、明らかに今日一日もつかもたないかの瀬戸際を確かに感じ取る。


「……随分凶悪な量を仕込んだな…」

ナルトが認める傀儡師は己一人だけだ、と同じ傀儡の術を扱うカンクロウに勝手ながら対抗意識を燃やし、毒の量を普段の数倍注いだサソリ。
原因が己自身だとは微塵も気づけないまま、彼はカンクロウを憐憫の眼差しで見遣った。

「このまま解毒するのは容易いが…我愛羅を取り戻すなら、サソリと再戦するのは必然」


それならば、毒の抗体を得る必要がある。サソリと闘い勝つ為に不可欠な血清を手に入れるには、今、解毒しては再戦しても二の舞になるだけだ。


砂隠れの風影が暁に連れ去られたという情報が真っ先に入るとすれば、同盟国の火の国・木ノ葉隠れ。

医療スペシャリストの綱手は火影故に里から離れられないが、彼女の弟子ならば、問題ない。
おそらく砂に応援を要請された木ノ葉隠れの里が打つ手段としては、その弟子を送り込む可能性が非常に高い。
一部隊に一人の医療忍者が必要だと昔から主張している綱手なら猶更。よって、解毒法が皆目見当がつかない砂が頼るとすれば、木ノ葉からの応援要請で来る医療忍者だ。

更に、現在の時期を顧みれば、波風ナルを筆頭にした部隊を送り込むと予想がつく。
木ノ葉隠れの里にいる内通者からの情報という裏付けがあっての推測だが、綱手の弟子となった彼女達の実力を見るならば、これ以上ない案件だ。もちろん第一に見たいのは、波風ナルがどれほど成長したか、なのだが。



「すまないな…毒の巡りを遅延させるくらいしか、今はできない。解毒できない場合は、コイツに体内の毒を処理させる。それまで苦しいだろうが、我慢してくれ」

毒を秘かに吸って、体内の毒の量を徐々に減らす働きをもたらすソレ。人目につきにくい首筋あたりにソレをつけた彼は、すっくと立ち上がる。

そうして、砂隠れの忍びに見つけられやすいよう、おもむろに印を結んだ。



「【疾風(しっぷう)沐雨(もくう)】……」

瞬間、激しい雨風がカンクロウの身についた砂を全て洗い流す。
中忍試験予選試合でドスの身体に纏わりついた我愛羅の砂を掃ったあの術である。

あの時は我愛羅からドスを守る為に使った術を、今は我愛羅を助ける為に動いたカンクロウを救う羽目に
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