美髯公の呪い〜小さいおじさんシリーズ19〜
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、笑ってんだコラ!!」
体をくの字に折って肩を震わせている白頭巾の尻を蹴って、豪勢が怒鳴った。笑いが止まらぬまま、白頭巾はほうほうの体で百均の小さいクッションに倒れ込んだ。
「相変わらずの厭らしい当てこすりよなぁ、丞相殿」
白頭巾のクッションの脇に、ごり…と偃月刀の切っ先が触れた。
「くっくっく…とんでもない。私はむしろ興味深いのですよ。ねぇ」
そう云って、傍らで成り行きを見守っていた端正に視線を送る。端正は僅かに肩を震わせた。
「うぅむ…正直その」
云いにくそうに、端正は一旦目を反らした。
「俺にしても他の二人にしても、死後目を覚ましたらこの場所に居たのだ。だが卿には」
怨霊、という着地点があった。そう云って端正は再び関羽に視線を戻した。
「正直…気が引けるのだが、この際だから聞いておきたい。卿は怨霊と化していた際の記憶はあるのか、どのような切っ掛けで怨霊であることをやめ、こちらの世界に来られたのか…いや、それよりなにより、卿は怨霊となったのに、何故俺は怨霊にならなかったのか」
「古傷から血を噴く程に悔しがりながら死んだのにねぇ…くっくっく」
白頭巾の額辺りを狙って振り下ろした端正の踵は、ずむりとクッションに沈んだ。白頭巾は身をひねったその体制をゆるりとほどき、座り直した。
「貴方が、基本的に『論理的な人間』だからですよ…恐らく」
「……むぅ?」
まんざらでもない顔をして、端正がクッションから足を抜いた。
「策で私に後れをとる度に貴方は、一見私に憤っているように見えてその実、自らの至らなさを責めていた。…違いますか」
「貴様に面と向かって云われるとクッソムカつくわ」
「だがどっかの髭もじゃ大将は基本的に反省がない、我が強い、迎合しない、自尊心がクッソ強い。要は呂蒙に策で一歩及ばなかったわけで、そんなので首を討たれるのは戦乱あるあるなのですが…自らの至らなさに腹を立てるという発想が一切なく、その屈辱だとか怒りは、たまたま対戦相手だった呂蒙に全フリされたのでしょう。自分を殺した相手は、死んで然るべき…それが彼の中の摂理なのですよ。しかしふふふ…本命だった孫権まではイマイチ呪いが届かなかった辺りが彼の限界というか…」
「ちょ、貴様、待」
「そ、そんなことない、孫権の襟首掴むまではいったぞ、ナイスファイトだろうが!!」
「何ですかソレ、フォローのつもりですか?プークスクス」
「うるっせぇな貴様はもう喋るな!!」
端正と豪勢が二人がかりで空気読めない白頭巾野郎を取り押さえた。…目前には、そうでなくても赤い顔を更に紅潮させた関帝様が、青龍偃月刀を下段に構えて仁王立ちしている。…ちょ、待てよ白頭巾、もう俺の敷金はゼロよ!?
「…ほう…おっしゃいますなぁ、内政しか能がない癖に内政を疎かにした蜀滅亡の戦犯の、何処ぞの丞相様が
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