美髯公の呪い〜小さいおじさんシリーズ19〜
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い。…私は、脳き…いや武人としての彼はある程度信用していたのですが」
「脳筋て云いかけただろ今」
「彼の魂は討たれた後、恨みを抱えたまま彷徨い歩き…浅ましくも、祟りを振り撒く恐るべき怨霊となり果てたのです」
「お、おいそれはちょっと云い過ぎじゃないのか?」
関羽大好きな豪勢が前のめり気味に反論するが、若干声が弱い。多分この件に関しては豪勢もちょっと『…あれ?』と思っているのだろう。そして端正は脇息にもたれてワクワクを隠そうともせず怪談話に興じている。…出た、端正の大好きな『怨霊』。奴は最近、この言葉に目がない。
「そしてある日、荊州を取り戻した呉軍の祝宴の席でそれは起こりました…主役は無論、関羽を討ち取った呂蒙…彼の英雄にねぎらいの言葉を掛けようと近寄った孫権の襟首に、呂蒙が掴みかかった。そしてこの世のものとは思えぬ声で…呂蒙はこう言い放ったのです」
―――我は、関羽雲長なり。
「な、なんと…しかしそうこなくてはな!!」
「呂蒙はそのまま昏倒し、やがて帰らぬ人となりました…元々、病を得ていたのか、はたまた関羽殿の呪いなのか。ともかく呉の重鎮・呂蒙は関羽殿に引きずられるように、樊城の戦いがあったその年に…」
「――楽しそうなお話ですなぁ、丞相殿」
ずむり、と地にめり込む青龍偃月刀。
重く艶めき下顎を覆い尽くす、長い髭。
怒気を孕む赤顔と、巨躯。
はじかれたように振り向く3人。
スマホを取り出し、大家の息子にLINEを送る俺。
三国志随一の英雄、蜀の関羽雲長、これにあり。
関羽ファンの大家の息子に『関羽が出たらLINEしてね♪』と頼まれているのだ。うまく目撃出来たらその月の家賃が20%オフになる超ボーナスキャラだ。
「お邪魔しまーす!!…うっわぁすげぇすげぇ美髯公だぁ!!」
早っ。
「久しいですな、戦乱の世に在って優雅にも病死を遂げられた丞相殿」
偃月刀に長身をもたせて、皮肉たっぷりに白頭巾を見下ろす関羽。…やはり俺たちの存在完無視はこいつらの中ではデフォルトらしい。
「ふふふ…何処ぞの粘着質な髭武将の呪いじゃぁございませんかねぇ…」
羽扇の影で厭らしい含み笑いを漏らしながらも、目は笑っていない。同国の仲間同士とは思えないような淀んだ瘴気が、二人の間には満ちていた。
「おほぉおお、再びまみえるとは、久しいのう関羽殿!」
豪勢が突如、瘴気の真っ只中に割って入る。
「……ご無沙汰、致しております」
偃月刀の切っ先を下に向け、関羽がかしこまって礼をする。…そして微かに間合いを取る。両手を広げて迎合の意を示し、半歩近づく豪勢、同じく半歩、間合いを取る関羽……。
「っておい、そこの白いの!!全っ然ホモ疑惑解けてないどころの話じゃないぞコレ!!貴様何か吹き込んだだろ!!…何
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