美髯公の呪い〜小さいおじさんシリーズ19〜
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消えた。3人の馬鹿なおっさんが、冷や汗を滝のように流してガクガク震えて固まっている。…ほんと、馬鹿じゃないのお前ら。何度同じこと繰り返すの。
「…おい、貴様の嫁、とうとう吹き矢使い始めたぞ!」
「くくく…愚妻の新兵器、ご笑納ください…」
「なーにがご笑納だ。今死にかけたのは貴様も同じだからな!」
端正が砂壁に足をかけ、10センチはあろうかという長い針を全力で引き抜きにかかったが、恐るべき圧力で繰り出された針は、おいそれと抜けない。
「あンの女怪…なんちゅう肺活量だ…!!」
「これもう女の所業じゃねぇな…おい貴様、この豪傑を余に寄越さんか?代わりに絶世の美女をあてがうから」
「はははは迷いどころですなぁ」
もう一度、畳の下からぬらりと現れた吹き矢がギラリと光る。3人はびくりと身を震わせて座り直した。
「は、話が逸れたな。その祟り神の続きを話すがいい」
「はぁ…樊城の戦いで、関羽殿は呂蒙に討たれ、首を落とされましたね」
「……その話は、結構怖いやつか?」
「……何ですか。話の腰を折らないでくださいよ」
「いや怖さレベルに合わせて心の準備があるのだ。…どうだ、どの位のレベルだ?」
―――うるっせぇなビビリかよ美周郎め。
「レベル、とは」
「落とされた首が飛んで、呂蒙に食いついたりするのか?」
「しねぇよ関羽殿を何だと思ってるんだ殴るぞ」
豪勢が横から入って来た。
「っち、よい。分かったから続きを話せ」
「はぁ……関羽殿から見れば呂蒙との関係は決して悪くなかった。無論、表面上の小康状態を保っておくことは、呂蒙の策略だったわけですが。まぁ戦国あるあるですよね。だが何というか…関羽殿は」
呂蒙率いる呉軍による背後からの襲撃を、全く念頭に入れていなかった。そう呟いて白頭巾は羽扇を震わせた。
「それを豪傑だとか人格者だとか後世の連中は誉めそやすが、あの方は…どうしようもない、オプティミストなのですよ」
「オプティミスト…?」
「楽天家なのです。まさか、笑顔で語り合っていた呉の太守が魏の動きに乗じて背面から突いてくるとは…思わなかったのでしょうね。こんなの典型的な戦国あるあるです。…そうでしょう?」
二人は当然のように頷いた。…考えてみればだ。吉川英二の三国志ではものすごい強引に美談にされちゃっているが、劉備だって劉表の弱体化に乗じて国を乗っ取っているのだ。
「大体、荊州という場所自体、呉から借りっぱなしで騙し騙し占有しているというのに呉が怒ってないわけがないじゃないですか。なのにすり寄っていい関係を築こうとしているのなら、それは迎合するんじゃなく警戒するべきなのです」
「―――やはり騙し騙しの自覚あったんだな貴様」
刀の柄に手を掛けた端正を面倒くさそうに制して、豪勢が続きを促す。
「戦いに敗れて首を落とされるは世の習
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