最終章 ハッピーエンドを君に
閑話 バレンタインの悲劇 前編
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「ヒュー、いい戦場日和だぜ」
「そうだぞ一誠。戦はすでに始まっている……」
「我に秘策あり。今年こそは――――勝ァつ!」
晴天の下、変態三人組が気炎を上げていた。
登校中の通学路の真ん中で。
松本、元浜、兵藤一誠のいつものトリオである。
通学している女生徒たちは、迷惑そうに顔をしかめて避けている。
そう、だって今日は――――
「お姉さま! おはようございます! これどうぞ!」
「あ、ああ、おはよう」
女生徒から挨拶代わりに、これでもくらえ、と渡されたのは、例のブツだった。
渡された少女はげんなりした顔をして紙袋の中にブツを入れている。
すでにそこは戦利品であふれていた。
――――それは紙袋というにはあまりにも大きすぎた
大きく
分厚く
重く
そして大雑把に入れすぎた。
それはまさにラッピングされた箱の塊だった
つまりはチョコレートだった。
それを血の涙を流しながら一誠たちが見つめていた。
もっとも、朝から美少女を見られてラッキーという下心もあったのだが。
「俺にもくれえええ」
「キャー、寄らないで変態!」
バレンタインデー。それは、少数の勝ち組と圧倒的多数の負け組を量産する悪魔の日(偏見)
変態三人組、今年の戦果もゼロになりそうだった。
「圧倒的負け組……!」
「慢心、油断、環境の違い」
「バレンタインのバカやろおおおおおおおおおおお!」
持ち切れなかった時のために紙袋まで用意したのに、とつぶやく一誠。
俺もだよ、と仲間は同意する。
どこからそんな自信が溢れてくるのか謎である。
女生徒にぎらついた視線を向けては、好感度を下げるという残念な行動をしていた彼らは、とうとう下駄箱に着いた。
「「「爆発しろぉおおおッ!!!」」」
――――思わず謎の叫び声をあげてしまった。
奇妙なオブジェがあった。下駄箱から箱が滝のように吐き出されている。
チョコレートの箱がぎゅうぎゅう、どころか溢れて雪崩を作っていた。
「くそ、どこのどいつのイケメン野郎だ!」
「木場か? 木場のやつなのか!?」
「ゆ る さ ん」
コイツは敵だ。一誠達の心情が一致した瞬間だった。
とりあえず仇敵の名前を確認しようとして――――微妙な顔になった。
さきほどの敵愾心は嘘のように消え、感じるのは圧倒的な敗北感、と虚しさ。
いや、同情の念すら沸く。
「ぼ、ボクの下駄箱が……?」
どうやら哀れな犠牲者が来てしまったようだ。
これはもはや敵ではない。ある意味尊敬すらするだろう。
そこにいたのは、登校中
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