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勇者にならない冒険者の物語 - ドラゴンクエスト10より -
死の嵐
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ギ! リョウギ!!」

 あっという間だった。
 エルフのパラディンたちは、なすすべもなく夜の黒い海に飲み込まれ、波のうちに姿を消してしまった。

「そんな・・・、エンギ・・・、リョウギ・・・。私は、・・・どうすれば・・・」

 その場に頽れるエルフの少女。
 涙を流しながら天を仰ぐと、その視界に一人の悪魔族の姿が映った。
 天高く掲げた右手に、雷の塊を発生させている悪魔族に向かって、届きもしないであろう刀を背から引き抜くと堂々と構える。

「あれか・・・あれがこれを引き起こしたのか・・・あれが!」

「おい、海に飛び込め!イオナズンがくるぞ!!」

 声の方に振り向くと、一人のウェディ族の船員が体当たりをするようにエルフの少女を抱えると黒い海に身を投げた。

「な・・・!」

「目を閉じろ! 口を閉じろ! 溺れるぞ!」

「き、きさまああああ!」

「あんたは助ける、あんただけは助ける! こんなくそったれな状況から、あんただけは!」



 アプラック号上空。
 悪魔族の魔戦士ギーベは不敵な笑みを浮かべて自らの手の内に溜まった雷の魔力の塊に満足げにうなずいた。

「これだけ魔力を高めれば十分でしょう。大王イカも死んでしまうかもしれませんが、まぁ、あれの魂も不味いが腹だけはふくれますか。共々、私の糧にでもなってください」

 カッと目を見開いて両の手を胸の前でクロスさせる。
 右手に収束していた雷が、一瞬ギーベの心の臓に吸い込まれたかと思いきや、全身を大の字にギーベが力強く広げると、ギーベを中心に激しい雷の嵐が吹き荒れる。

「ふふふ・・・ふふはははははは! すべて私の糧となれ! イオナズン!!」

 魔法名を唱えるや、雷の嵐は激しい閃光を伴って爆発した。
 雷の爆風にさらされて、アプラック号が無残に四散する。
 アプラック号を締め上げていた大王イカもまた、全身に激しい裂傷を伴って苦しげに暴れると、ゆったりと海の底に姿を消した。

「んー、流石は大王イカ。この程度の魔法ではくたばりませんか。・・・しかし、妙ですねぇ」

 悪魔族ギーベは、小首をかしげてアプラック号の残骸を眺めた。

「磯臭いウェディどもの魂の味はしましたが、熟れ始めの果実のようなエルフの乙女の魂の味が入ってこない・・・。逃げられる状況でもなかったはずですし、ルーラを使っていれば飛び去る先が見えるようなものですが・・・」

 つまらなそうに巨大な斧を振り下ろす。

「さては、私が喰らう前に海に落ちて死んでしまいましたか・・・。いやはやなんと、最後まで取っておいたケーキの頭のイチゴを奪われたかのようです!」

 満足げに腕を組み、右手で顎をさする。

「まぁ、先に死んでしまったものは仕方があ
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