巻ノ百四 伊予へその二
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「このまま行くぞ」
「油断せずに」
「そうしていこうぞ」
こう話してだ、幸村は讃岐からさらに真田の忍の道を通って猿飛の生家まで向かった。そしてだった。
山の中の小さな家を見てだ、彼は猿飛に問うた。
「あの家がじゃな」
「それがしが生まれ育った家です」
「外に出るまでか」
「拙者実は両親とは幼い頃に死に別れておりまして」
猿飛は幸村に自身の身の上も話した。
「そしてです」
「祖父殿に育てて頂いてか」
「はい」
まさにというのだ。
「殿にお会いしたあの旅までです」
「この家に暮らしてか」
「日々修行に励んでおりました」
「そうであったか」
「祖父一人、孫一人の暮らしでしたが」
「その暮らしはか」
「実によいものでした」
猿飛は微笑み幸村に話した。
「実に」
「そうであったか」
「今も懐かしいです」
実際に猿飛は笑って話していた。
「ここでは長きに渡ってです」
「暮らしていてか」
「楽しい日々でした」
「お主文字も読み書きが出来るが」
「そちらも教わりました」
祖父である大介にというのだ。
「そうして頂きました」
「そうであるか、お主達十勇士は皆読み書きが出来るが」
「ははは、それ位ですが」
あくまで読み書き程度である、十勇士達のそれは。
「学問まではです」
「苦手か」
「はい、どうしても」
このことが苦笑いで幸村に話した。
「そうしたことは」
「そうか」
「はい、まあ読み書きが出来れば」
「それでかなり違うからのう」
「だからですな」
「よく教えてもらった」
大介、祖父である彼にというのだ。
「このことは感謝せねばな」
「全くですな」
「さて、ではじゃな」
「はい、これよりですな」
「祖父殿にお会いしてじゃ」
そしてというのだ。
「お話をしようぞ」
「これよりですな」
「家に入りな」
「それでは」
猿飛も幸村の言葉に頷いた、そしてだった。
彼は幸村を家に案内しようとしていた、だがその彼等の前に大介がすっと表れてまずは幸村に言った。
「お久し振りです」
「おお、出られたか」
「真田様と孫の気配を感じましたので」
だからだというのだ。
「只今参上しました」
「左様か」
「この度来られたのは」
「実はそれがしにです」
猿飛は自ら祖父に申し出た。
「再びです」
「稽古をじゃな」
「つけて頂きたいと思いまして」
それ故にというのだ。
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