巻ノ百四 伊予へその一
[8]前話 [2]次話
巻ノ百四 伊予へ
猿飛は幸村に強い声で言った、その言ったことはというと。
「それがし前から考えていましたが」
「御主も修行を受けたいか」
「おわかりですか」
「ははは、わかるわ」
幸村は笑って猿飛に応えた。
「十勇士の者は皆然るべき修行を受けてきた」
「そしてそれぞれの術をさらに磨いております」
「だから御主もじゃな」
「はい、それがしの木の術や体術をです」
「これまで以上に磨きな」
「さらに強くなりたいです」
「拙者を助ける為にじゃな」
「はい」
その通りだとだ、猿飛は幸村に答えた。
「十勇士の他の者達と同じく」
「そういうと思っておったわ」
「それでは」
「うむ、行こうぞ」
幸村は笑い猿飛に応えた。
「これより御主がさらに強くなる場所にな」
「殿もですな」
「他の者達の修行にも付き合ってきたのじゃ、御主だけついて行かぬことはない」
「そう言って頂けますか」
「そして拙者は言葉に出したらじゃ」
「その言葉通りにされる」
「有言実行じゃ」
幸村の座右の銘の一つだ、誠実であれという彼の考えをそのまま体現しているのである。それも強く。
「だからな」
「それでは何処に行かれるのですか?」
「伊予じゃ」
幸村は笑みを浮かべて答えた。
「その国に行くぞ」
「伊予、まさか」
「うむ、御主の生まれ故郷でありじゃ」
「そしてですな」
「御主の家に戻るぞ」
彼が生まれ育ったそこにというのだ。
「そしてじゃ」
「祖父殿とですか」
「再び会いな」
そうしてというのだ。
「稽古をつけてもらうぞ」
「わかり申した」
「里帰りじゃな」
幸村は笑ったままこうも言った。
「御主にとっては」
「そうですな、確かに」
「それもよいな」
「無論です」
猿飛の返事は強かった。
「それでは」
「すぐにな」
「行きましょうぞ、伊予に」
「家への道は覚えておるな」
「はい、家の中のことも」
それまでもというのだ。
「よく」
「よし、ではじゃ」
「これより伊予に」
「行こうぞ」
こう話してだ、そしてだった。
幸村は今度は猿飛と共に九度山を出てすぐに四国に入り伊予に着いた。海を船で渡ったが。
「いや、港でも船の中でもです」
「我等とはわからなかったな」
「それだけ我等の変装がよかったということですな」
「うむ、変装が巧みであるとな」
「あの様にですな」
「誰にもわからぬわ」
「変装もまた忍術の一つですな」
「そうじゃ、だから変装が上手なことはじゃ」
まさにそれはというのだ。
「それだけ忍術がよいということじゃ」
「そうなりますな、では」
「このことはよしとしてな」
そうしてというのだ。
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ