第63話『水泳』
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ではなく、海水浴で着るようなラッシュガードと呼ばれる水着なのだ。フード付きで、彼には持ってこいである。
「別に水は怖くないって。確かに深いけど・・・それでも大丈夫だよ」
「大丈夫な要素が感じられないんだけど…」
「俺が一緒に入るから。ね?」
「うーん…」
誘っても、まだ迷いを見せる狐太郎。彼にとって、この決断は大きいことなのだろう。
次なる言葉をかけようと、口を開いた瞬間──
「ハルトー、泳ぎ教えてー!」
「結月!? おい待て、プールサイドを走るな──」
向こうから駆けてくる結月に晴登が叫ぶも、時すでに遅し。濡れた地面に滑って、彼女はバランスを崩してしまった。
しかし、問題はここから。彼女はバランスを崩した訳だが、コケることは無かった。その代わり、晴登達の方へふらつきながら、それまでの勢いまま走って来る・・・もとい、突進してくる。この後の展開は、晴登にも狐太郎にも予想がついた。
「おっとっと!」ドン
「「あっ」」
軽い衝撃だったが、それでも晴登と狐太郎の身体はプールへと投げ出された。ドボン、と音を立てながら、二人の身体は水中へと沈む。
少し経って、二人とも顔を水面から出した。
「ごめんハルト、大丈夫!?」
「俺は大丈夫。けど、柊君が・・・ん?」
そこまで言って、晴登は目の前の光景に言葉を止めた。
「はぁはぁ…」バシャバシャ
「・・・犬かき…?」
眼前、急いでプールサイドへと戻ろうとする狐太郎。ただ、その時の彼の泳ぎというのが、なんと犬にも劣らない犬かきだったのだ。
余談だが、ここでようやく晴登は、狐太郎が決して泳げない訳では無いことを知る。
「大丈夫…っぽいね」
「なんか、悪いことしちゃったな…」
「"プールサイドは走らない"大事だから覚えとけよ」
水泳について何も知らない結月には、やはり一から教える他あるまい。こうして、晴登の水泳教室(仮)が始まった。
*
「それでは、手始めに50mのタイム測定を行います。この結果次第で、今後のコースを分けることにしますので、皆さん頑張って下さいね」
「…あーあ、水泳教室って言っても、5分もできなかったな」
「でも、クロールだっけ? 泳げるようになったよ」バシャバシャ
「毎度の如く、お前の上達の早さはどうなってるんだ」
「えへへ」
推測だが『異世界人は元のスペックが高い』というのが挙げられる。となると、教えていく全てのものを、きっと晴登より上手くこなすようになるだろう。そう思うと、結月の屈託ない笑顔が恐ろしく見えた。
「それじゃあ、男女に分かれて出
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