第63話『水泳』
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水着なのだろうか。スク水とは一風違い、シンプルなデザインが表面に施されている。それを身に纏う莉奈は如何にも水泳部の姿であり、活発なイメージを連想させた。
「おやおやぁ、どうしました三浦君? もしかして見とれちゃってます? ちょっと、結月ちゃんに嫉妬されるじゃない」
「なっ…違うし!」
「そんなに赤くなって・・・説得力無いね」
「ぐ……」
…ダメだ。調子が狂う。このままでは、どんどん評価を下げられて、惨めな気分になってしまう。どうにか打開せねば・・・
「──皆さん集まりましたか? では、水泳の授業を始めるに当たって、まずは準備運動をしましょうか」
「「はい!」」
「む、惜しいタイミング……」
「じゃあハルト、また後でね」
「お、おう…」
助かった。山本の助け船とも呼べる一声に、晴登は感謝する。誇張無しで、九死に一生を得た気分だった。
適当に準備運動を終えた全員は、ようやくプールに入ることが許される。あくまで授業であるから、楽しむのは本来違うのだが、やっぱりプールは楽しい。
「それでは各自、アップを兼ねて、まずは一往復してきてください」
「「「はい!」」」
全員の返事が重なり、山本はうんうんと頷く。
しかし、どうしたものか。短水路の一往復というのは、もちろん50m。正直、それは晴登にとって頑張って泳ぐ距離であり、準備運動で行くには幾分ハードである。
「鳴守 大地、行っきまーすっ!!」ドボン
「飛び込んだ!?」
・・・と、考えていた矢先、大地が先陣を切ってプールに飛び込んで行く。そのフォームは洗練されたそれであり、彼の運動神経の良さを如実に示していた。
大地につられて、クラスの男子が少しずつプールに入り始める。不格好な飛び込みのせいで、水しぶきが飛び散った。
「飛び込みとかしたことないし・・・って、ん?」
飛び込み台の前で戸惑う晴登だったが、その時、隣のコースの一人の少年に目が留まった。
「水……」
「どうしたの、柊君?」
「うわ、三浦君!? いや、その、僕って水が苦手で…」
「あーなるほど…」
大きなケモ耳を垂らし、しょぼくれてるのはクラスメイトの柊 狐太郎。水に触っては、「ひっ」などと小さく叫び、フードを深く被る動作を繰り返している。
「見学すれば良かったのに」
「それだと、授業日数が足りなくなるかもしれないんだよ」
「でもフード被ってたら泳げないでしょ?」
「うぅ…やっぱり恥ずかしいから…」
そう言って、さらに彼はフードを深く被る。
ちなみに彼の着ている水着は、他の男子達みたいにスク水
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