無手勝流
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トライクボールだけを転がすセーフティスクイズ。三塁走者の絵里は足が速いため、ピッチャー正面でさえなければ生還することは可能だ。
「ボール!!3ボール」
バントの構えを見たことで外してしまった千葉経済学高校バッテリー。これでもうボール球を投げることはできない。
(まぁ、このグタグタな感じなら何もさせない方がいいか)
無理に打ちに行かせずにここは追い込まれるまで見送らせてみることにした剛。結果はストライクを1つ取られたものの、続くボールをやはり入れきれずファアボール、押し出しになった。
「タイム!!ピッチャー交代!!」
これにはたまらずこの回2度目となる投手交代を申し出る千葉経済学高校。結局この背番号10は1つのアウトも取ることができずに降板となった。
(わかってない。今のは投手じゃなくてキャッチャーとあんたが悪いんだ。キャッチャーがストライクを要求する勇気があればピッチャーは投げただろうし、監督からそう指示を出せばこんな事態にはならなかった。全てピッチャー1人に責任を押し付けている限り、俺たちに勝つことはできない)
高校野球では球児たちは十分に戦えるだけの力を3年間で身に付けることができる。しかし、選手たちは負けたら全ての努力が無駄になる緊張感から思ったような力を発揮できないことが多い。
それをなんとかするのが司令塔である捕手と選手を育ててきた監督の仕事。それを分からずに投手を代えれば流れが変わると思っている相手監督に、剛は腹ただしさを感じていた。
『あんたは黙ってろ!!全ての責任は俺が持つ!!お前らは自分を信じて戦え』
ベンチに辞表を叩き付け正論だけを並べる部長を一喝し、絶望的な表情を浮かべている選手たちを鼓舞する東日本学園の監督。彼のその一言でチームは息を吹き返したことは間違いない。
(それだけの力がある監督かは選手との信頼次第だけどな)
自分たちはその監督を信じて戦ってきた。そして今選手たちは自分を信じて戦ってくれている。相手がそれだけの信頼を勝ち得ていないから、もしかしたらこうやった戦い方をするしかないのかもしれない。
「相手はエースを登板させてきたぞ。お前たちの実力を測るには持ってこいの相手だ。持てる力を全部ぶつけてこい!!」
「「「「「はい!!」」」」」
「はぁ、退屈ね」
スタンドで試合を観戦していたツバサは前腕のストレッチをしながら大きなアクビをしていた。
「コラ、まだ終わってないぞ」
「もう終わったようなもんでしょ、こんな試合」
試合は終盤の7回へと突入していた。現在の得点は5対3で音ノ木坂リード。わずか2点差と思われそうなものだが、内容を見ればそれがどれだけ大きな差
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