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和-Ai-の碁 チート人工知能がネット碁で無双する
第二部 北斗杯編(奈瀬明日美ENDルート)
第40話 再戦の望み
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荒な生活をなされましたからね」
晩年は彼はアルコール依存症の禁断症状と戦いながらの対局を重ねることもあった。
「塔矢さん、中国の陳学明八段が先日言っておりましたが――私もまた思っています。あなたは以前より強くなっていると」
「嬉しいですね。引退した今、強さだけが私のプロとしての証なのですから」
「塔矢さん、私はあなたを客員棋士として迎え入れるよう韓国棋院に働きかけてみるつもりです」
「客員棋士――――」
「もし認められればあなたは韓国のどの棋戦にも自由にさんかできる。どうです?」
「願ってもない! 望むところです!」「そのかわり教えて下さい」「え?」
「あなたは何も言わず引退されてしまったが、今何を目標にしているのですか?」
「目標? 最善の一手の追求ですよ。その喜びに勝るものはありません」
「たしかに先生も努力を怠れば進歩が止まるばかりでなくかならず退歩すると仰ってましたからね。
しかし――それだけではないのでしょう?」
「――――ある打ち手との再戦を心に期しています」「ある打ち手?」
「彼もまたその強さだけが存在の証――今はその再戦のために力をつけている――――といったところでしょうか」
「塔矢さん、その打ち手とは和-Ai-ですか?」
「――――違います」「え?」
たしかに和-Ai-は強い。稀代の打ち手だろう。
しかし、あの者の碁は半目差でも「勝てればいい」のだ。
差が開けば明らかに「これで十分だと」手が緩むことがある。
そこに最善の一手を追求する意思など何一つない。
あれこそ盟友のいう「ただ勝つための利己的な碁」だ。そこには美学も己の碁に対する誇りもない。
「たしかに私は和-Ai-に一度敗れてはいますが、春蘭杯に限って言えば私の望みは彼女との再戦でしょうか」
「彼女というと……東堂シオンですか?」「ええ」
「塔矢さんほどの方が一介のアマチュアと?」
「わたしは彼女と互先で戦わなかったという負い目がある」
あのとき三子の置き石を置かず互先で戦っていれば彼女はプロに失望することは無かったのではないか?
彼女の実力は聞き及んでいたにも関わらずプロ棋士として自負、タイトル保持者として矜恃が私に置き石を置かせた。
今も日本棋院が対局禁止令を出してまで守ろうとする権威と特権から自由になって改めて気付かされた。
「……そうですか。春蘭杯については分かりました。しかし彼女ではない彼とは――誰です?」
私は彼に敗れて引退した。彼も和-Ai-に敗れてから姿を消している。
もしも私が和-Ai-を破ることがあれば再び彼が姿を現すのではないかと――。
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