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和-Ai-の碁 チート人工知能がネット碁で無双する
第二部 北斗杯編(奈瀬明日美ENDルート)
第35話 最強初段 vs 最強女流 後編
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 それは進藤が対局の前に語ったAiとsaiの差を表すように……。

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case 7 「越智康介」

 布石の段階で低くもぐれば相手の石を厚くして損になるというのが、ボクが院生のときにプロ先生から指導碁で教わった従来のセオリーだ。

 この碁で奈瀬は早々に隅をエグッた後にセオリーを無視し厚くなった外の石を攻めていった。
 「無理が通れば道理引っ込む」みたいな打ち方で割と自然に優位を築いていくのは、もう呆気に取られるしかない。今までボクが習って培って来た地に辛い碁が真っ向から否定される。

 要するに、ボクには見えない価値、有利になる要素が盤上にあるんだ。
 突飛に見える手も奈瀬にとっては「あるセオリー」に沿った作戦なのかも知れない。

 対局の後に奈瀬が進藤に宣言する。

「私も秀策は好きだよ。心の師匠が好きな棋士だからね。それなりの思い入れもあるよ」

「だから天元の次に本因坊のタイトルが欲しいと思ってる。私、進藤より先にタイトル取るつもりだよ」

 七大タイトルを取った女流は今まで一人もいない。挑戦者になった女流棋士さえいない。
 けど奈瀬は入段初年で天元戦を一番下から勝ち上がり本戦出場を果たした。
 天元戦11連勝の活躍は、全日本早碁オープンを11連勝で優勝した東堂シオンに匹敵する。

 後一歩で史上初のタイトル挑戦者。そして奈瀬に勝った石橋先生が天元のタイトルを取った。
 だからそこ三大リーグ入りを果たした女流が今まで誰一人いないとしても彼女の言葉には重みがある。

 奈瀬の言葉を笑うくらいなら、自分が奈瀬より上だと盤上で証明すればいい。

 そんなこと口先で言える資格のある棋士はこの場では塔矢アキラくらいじゃないか。

 ボクらはこの先ずっとどっちが強い?どっちが弱い?と言われ続ける世界にいる。

 そこに男も女も年齢の上下も関係ない。あるのは強さの上下だけ。建前はそうだ。

 香川いろはと戦う前のボクには“しょせんは女流”だとか侮りがあったのは認めるさ。
 けど弱かったら、結果が出なかったら、それが“理由”にされる世界だ。

 ボクだって“まだ一つ下だから”と言われてきたんだ。
 勝てば年少と褒められ、負ければ年少と侮られる。結果でしか“理由”を覆すことができない。

 一つ年上で一年だけプロの世界で先輩の塔矢アキラが本因坊リーグ、名人リーグ入りで史上最年少。
 年寄りが負けたら“老い”が理由にされ、若者が負けたら“経験不足”が理由にされる。

 僕らは結果にレッテルを貼られて生きていく。そのレッテルを剥すには力しかない。

 やって来た塔矢はボクの対局なんか見向きもせず進藤と奈瀬の許に向かった。
 
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