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真田十勇士
巻ノ百三 霧を極めその八

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「そうであるな」
「はい、とても」
「ならばじゃ」
「あの方がおられても」
「若し何かあればじゃ」
「大坂で戦うしかありませぬか」
「そうじゃ、だからな」
 昌幸は我が子に言った。
「それでもじゃ」
「茶々様をですな」
「そうした方とわかってじゃ」
 そのうえでというのだ。
「戦うしかない」
「では何としても」
「茶々様をじゃ」
「お止めすることですな」
「うむ」
 その通りだというのだ。
「よいな」
「わかり申した」
 幸村も頷いて答えた。
「さすれば」
「それではな」
「そうしていきましょう」
 その時はというのだ。
「それがしも」
「よくな、してじゃ」
「して?」
「話を変えるが」
「はい」
「大助じゃが」
 昌幸は彼から見て孫の話もした。
「わしが思うにな」
「何か」
「すくすくと育っておるな」
「そう言われますか」
「このままいけばじゃ」
「無事に育ち」
「よい者になる」 
 こう言うのだった。
「健康なな」
「左様ですか」
「身体あってこそじゃ」
 まずはそこからだとだ、昌幸は述べた。
「何かが出来る」
「頑健な身体があってこそ」
「御主も源三郎もじゃ」
「兄上もですか」
「特に源三郎は頑健じゃ」
 その身体はというのだ。
「そうした身体があってこそな」
「武芸も学問もですか」
「出来る」 
 そうだというのだ。
「それは御主もわかるであろう」
「はい、確かな身体があれば」 
 まさにとだ、幸村も父に答えた。
「どれも出来ます」
「そうじゃ、そして大助もじゃ」
「確かな身体がある」
「だからな」
「よいことですか」
「そうじゃ」
 まさにというのだ。
「武芸も学問もふんだんに出来る」
「それでは」
「うむ、しかし御主はな」
「大助を育てるにしては」
「甘いのう」
 幸村のその気質についてはだ、昌幸は少し苦笑いになってそのうえで彼自身に述べた。
「どうもな」
「そのことは」
「自覚しておってもか」
「それがし十勇士達にもです」
「甘いな」
「厳しいことを言ったことがありませぬ」
 そもそも一度もその必要を感じたことはない、彼等が強く素直な気質であり尚且つ彼に絶対の忠義を誓っているからだ。
「他の家臣達にも」
「そうであるな」
「そして大助も」
 我が子もというのだ。
「どうもな」
「そうじゃな、だから厳しくすることはな」
 それはというのだ。
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