暁 〜小説投稿サイト〜
和-Ai-の碁 チート人工知能がネット碁で無双する
第二部 北斗杯編(奈瀬明日美ENDルート)
第12話 奈瀬の想い
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20代で史上初の7冠を達成した若き棋士がいたらしい。
 そういった存在と五冠の父を超えようとする塔矢アキラを重ねているのだと思う。

 プロ棋士の人数は400人以上。けどトップの舞台で戦ってる棋士は一割にも満たない。
 例えば塔矢アキラが史上最年少のリーグ入りを果たした本因坊リーグの定員は8名。
 最終予選の参加者が36名。プロ棋士の大半は最終予選の前に消える。
 
 棋士の大半はタイトルも挑戦者もリーグ入りも何かしらの記録もかかってない場で戦っている。
 そこは記録係も観戦記者もいないし棋譜も公表されない場所。

 そんな場所を抜け出して輝ける舞台で戦うトッププロは少数。

 彼が言った「悪いけど後1年だけは何も言わず自分の好きにさせて欲しい」って――。
 1年経って帰れなかったら和-Ai-のノートパソコンは私に譲ってくれるらしい。

 彼が言うには、和-Ai-に選ばれたのは私。

 彼は「自分はただのトランスポーター(運び屋)」だって言ってた。悲しかった。

 私は桐嶋和さんのように輝けるのだろうか。
 前例のない道を諦めることなく切り開いていけるのだろうか。

 ふと進藤が羨ましいと思った。彼は院生になったとき塔矢アキラのライバルだと言った。
 最初は信じられなかったけど、今は疑いもなく二人はライバルなのだろうと思う。

 碁は一人では打てないと誰かが言っていた。

 あくまでも和-Ai-は私の師匠で競い合う相手ではない。

 彼が未来の囲碁AIについて話すときに言っていた。
 AIとの対局は対人戦とは違って競い合っているという充実感がない。

 人間がゲームを楽しく感じるのは「競い合っている」ときで、だからこそ、どれだけ囲碁AIが強くなっても、対人ゲームの楽しさが損なわれることはないと――。

 塔矢アキラに追いつこうと頑張る進藤。
 そして追ってくる進藤より、ずっと先へ前へと進もうとする塔矢アキラ。
 
 切磋琢磨する二人。

 桐嶋さんにもライバルがいると聞いた。私には同性でライバルと言える相手はいない。

 院生には同い年の佐々木麻衣ちゃんがいるけど、彼女は一般採用枠での入段は難しいだろう。

 ないものねだりをしても仕方ない。彼が消える前に天元の棋譜を残そう。

 私が諦めたらダメだ。私がタイトルを諦めたら彼は消えてしまうだろう。

 彼に振り向いてもらえるように私は前を向いて進もう。


 ――私が挑むのは未来だ。
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