暁 〜小説投稿サイト〜
和-Ai-の碁 チート人工知能がネット碁で無双する
第二部 北斗杯編(奈瀬明日美ENDルート)
第08話 伊角の帰還
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らのぉ。
 今戦っとる塔矢のせがれもそうじゃし、緒方くんや一柳のお気に入り小娘もそうじゃの」

「だとしたら進藤ヒカル初段は残念ですね。
 桑原先生や緒方先生、塔矢行洋先生まで注目してたと聞きましたが?」

「ひゃひゃひゃ。ワシは何も心配しとらんよ。
 時には苦しみも迷いも必要じゃ。
 お主だって迷っておるからこそ此処におるんじゃろ?」

「……はい。ライバル視してる進藤初段が欠場したことで、アキラくんが調子を落としてないか心配になって。若獅子戦も敗れましたし……」

「そりゃあ大きなお世話じゃい。誰だって負けることくらいあるわ。
 負けることがあっても塔矢のせがれは全力で上を目指しておる。
 自分が向かい合うべき相手が諦めない限りアヤツは必ず戻ってくる」

「随分と進藤ヒカル初段を買ってるんですね」

「ふぉっふぉっふぉ。お主もじゃろ?」

 棋院の入り口の扉を開け進藤ヒカルが飛び込んでくる。
 気づいた職員が声をかけるが、桑原本因坊が止めてヒカルにアキラの対局の場を伝える。
 
 進藤ヒカルは僕の存在に気づくことなくそのまま階段を駆けていった。

「ほれ。杞憂じゃったろ?
 目を見たらならわかるじゃろ。どうやら立ち直ったらしい」

「知っとると思うが、碁は二人で打つもんなんじゃよ。
 碁は一人では打てん。1人の天才だけは名局は生まれんのじゃ」

「のう。小僧も分かるじゃろ? 等しく才たけた者が2人いるんじゃよ」

「二人そろって神の一手に……一歩近づくですか? だとしたら皮肉だ。
 ネット碁で無敗を続ける正体不明の棋士Aiは誰にも手の届かない孤高の存在だ」

 Aiはsaiに勝った。おそらくtoya koyoにも勝つだろう。次に誰と戦えばよいのだろうか?

「あの“ヒトのものではない碁”を打つ存在か。お主も散々に振り回されておるのぉ」

「先ほどは碁は一人では打てぬといったが……。
 歴史を見れば時として一世本因坊算砂、本因坊道策といった突出した独りの存在が、碁の高みを引き上げることがある。
 今や和-Ai-は正にそういった存在じゃの」

 「碁の高みを引き上げる……ですか?」「そうじゃ」

 気が付けば和-Ai-の存在が多くの棋士たちに影響を与えていた。ただ僕は帰りたいだけなのに。
 
 これでは囲碁の神様の笑えない遊戯に付き合って弄ばれる道化だ。

「苦しみも迷いも必要と言ったが、いつかは歩む覚悟を固めるのじゃな。
 生きるということは終わりのない道を歩むようなもの。碁と同じじゃ独りでは歩めんよ」

 いつか歩む覚悟か……まだ僕は戻ることを諦めたくはない。

 桐嶋和……ただ彼女に会いたい。

 せめて一度だけでも会いたい。声が聞きたい、
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