アージェント 〜時の凍りし世界〜
第二章 《暁に凍る世界》
ドキドキ!?温泉パニック!!A
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…お嬢様はこの旅行を心底楽しみにしてらっしゃいました。聞き分けのいいお嬢様ですから、中止となっても駄々は捏ねないでしょう。ですがーーー」
氷雪はきっと悲しむに違いなかった。そして、氷雪のそんな顔を見れば暁人だって悲しむだろう。そんな様を、ミミは見てはいられなかった。
「……この件、私がどうこうするしか無い様ですね。………やって見せましょう。その程度出来ずして、ご主人様の使い魔は名乗れません。」
妹の為なら世界すら躊躇いも無く滅ぼす主人に仕えているのだ。ミミの思考もまた、主人に似るのはある種当然の帰結だった。
「……そうですね。取り敢えず、目前の危機を回避しましょう。」
ミミは一人嘯くと、自身を本来の姿、緋い目の白兎に変える。
「……参ります。」
覚悟を決め、ミミは湯殿に向かう彼女達へと、背後からの突撃を敢行した。
〜ミミの突撃一分前〜
「そう言えば……他にも泊まってる人いてんのやろか?」
はやてが疑問の声を上げる“知る人ぞ知る”といった風情が滲み出ているこの松風屋。仲居さんに聞くのもなんとなく憚られたのだ。
「……うう、女の人ならいいんだけど……」
フェイトが不安そうな声を上げる。一応水着は持ってきてあるものの、男性と同じ湯船に浸かることにはやはり抵抗感があるようだ。
「大丈夫だよ、フェイトちゃん。プールとか海とそんなに変わらないよ。」
なのはがフォローするものの、そもそもフェイトはその二つも苦手としている為に、大した効果は上げていなかった。
「うう〜、やっぱり恥ずかしいよぉ。」
「………ダメやで、フェイトちゃん。」
頬を紅く染めて恥じらうフェイトに、はやてが何か悟りでも拓いたかの様に語り掛ける。
「フェイトちゃんそないなイイ身体しといて何を恥ずかしがってるんや。それは他の大多数の女の子に対して失礼やで?」
どうやらはやては他の二人に比べてあまり育ってないのを気にしている様だ。どこが、とは言わないが。
「ふぇっ!?」
「は、はやてちゃん?」
「ええか?世の中晒したくとも晒せない女の子も多いんや!だからフェイトちゃんみたいな出てるトコ出てる女の子が恥ずかしがるんはナシや!!」
「そ、そんな事言われても………」
困る。そう言いかけたフェイトのすぐ脇を、白い影が後ろから追い抜いた。
「「「?」」」
三人が注意を向けると、前方数メートルの所に白いウサギが佇んでいる。三人の方をジッと見詰めて、何か言いたげな雰囲気を醸し出している。
「……ウサギ?どこの子やろ?」
「外から入って来たのかな?」
このウサギは当然ミミなのだが、三人が分かる筈も無い。まして、彼女の目的など知るよしも無い。
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