―正義の味方―
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「どうしてこうなったんだ……?」
何度目になるかも分からない呟きは、誰にも届くことはなかった。それはこちらの声が小さいとか、周りに人がいないとかいうことではなく、物理的に届くことはなかったのだ……この顔を覆っている何かのせいで。
「Jinzoの準備できましたー!」
要するに被り物をしているわけだ。いや、被り物だけならばまだ良かったのだが、今の俺は全身を着ぐるみに包まれていた。チラリと鏡を見てみれば、そこに映っているのは見慣れた俺の身体ではなく《人造人間 サイコ・ショッカー》の着ぐるみであり、こちら側……アメリカ風でいうならばJinzoの格好だった。
アメリカ・アカデミアの特別授業という名目で連れてこられたのは、現地で開設された海馬ランド。もはや世界中に創設されているような海馬ランドが、アメリカにあるとしても今さら驚きもしないが、まさかその現地に連れてこられるとは思いもよらず。ヤラセ一切なしのデュエルショーが有名とは聞いていたが、アメリカ・アカデミアの生徒が授業の単位として係わっていたならば、是非もなしと言ったところだ。
「……対戦相手は?」
そうして『中の人』の一員となった俺は、敵役のサイコ・ショッカーとなった。スタッフの一人にマイクを取りつけられて、ようやく外部との会話が可能となって。詳しいことは知らないが、このマイクはデュエルショー向けの翻訳機にもなっているらしく、流石にショーの観客相手に向けるほどの英語力はない自分には非常にありがたい。
「遅れてくるってよ。なにせカイバーマンだからな!」
そんな海馬コーポレーションの技術に感謝しながら、近くのスタッフに対戦相手のことを訪ねてみたものの、あまり要領をえない返答しか来なかった。海馬ランドのヒーローショーで敵役はこちらなのだから、対戦相手はカイバーマンなのは当然なのだが、スタッフからどうにも苦笑いを感じる。
「ほら、行ってこい!」
そうして詳しい説明もなく腰を叩かれてステージに立ってみれば、なるほど、確かに一番人気のショーと言えども過言ではない客入りと熱狂だった。とはいえこちらからすれば、ショッカーのスーツのせいで動くことも出来ずに、ただ棒立ちすることしか出来ないわけだが。幸いなことにショー自体は他のスタッフの尽力により、敵ボスの中の人が棒立ちだろうが問題なく進行していて。
『カイバーマン様のご到着だ。後は頼むぞ』
「……了解」
しかしてずっと棒立ちのままで許されるはずもなく。スタッフから届けられる通信に了承して、そろそろ出番かと気を引き締めるものの、肝心のカイバーマンの相手はどこにもなく。スタッフにもう一度だけ確認をしようとしたところ、突如としてかの《青眼の白龍》を模した戦闘機が、本当に目前を飛翔した。スーツを着てい
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